レーサーと戦闘機乗りを描かしたら日本一かもしれない最高の漫画家のひとり、それが新谷かおる先生です。その新谷先生がF1乗りを描いた壮大なストーリー「ジェントル萬」(タイトルが古臭いのは玉に瑕ですねえw)を一気読みしました!
主人公 八百萬(やお まん。以下、マン)はインディーカーのレーサーです。インディーカーとはF1同様のフォーミュラカー(「車輪とドライバーが剥き出しになっている」という規格(フォーミュラ)に沿ったレーシングカー)を使って行う、米国のレースカテゴリーのことで、特にオーバル(楕円形)のコースでの超高速レースが有名です。
その過激コースを駆け抜ける腕と度胸を買われて、マンはF1レーサーに抜擢されます。
しかし、実はマンは、世界中の女性と浮名を流して子供を作りまくった八百財閥のオーナーの嫡出子という設定で、八百財閥を敵視するハート財閥の陰謀に巻き込まれていくことになるのです。
HONDA愛が爆発するF1漫画
本作は、どうも途中で連載が中止になり、全体のプロットを全て吐き出していないようで、後半からかなり急いでまとめてしまった感が強いです。
マンという日本人レーサーの活躍をもっともっと見たかったと思うし、「赤いペガサス」のようにチャンピオンになるまでの過程やレースをじっくり見たかったのですが、そのあたりの描写がしり切れとんぼ・・。八百財閥と敵対組織の戦いは、読者にとってみるとサブプロットであったままで押さえて欲しかったのですが、そっちが全体のストーリーに強い影響を出し過ぎてしまっているのが残念です。
なので、全体の筋よりも、細かい断片がより印象深くなるのですが、新谷作品は、伏線自体がとっても面白いので、ある意味それでいいか、という気になります。
この作品の場合、なんでかな?と思うくらいにHONDA愛が炸裂するのが面白いです。
主人公マンが所属することになるF1チームのGMとして活躍するのは、元HONDAのF1チームのメンバーだった柳、という人物なのですが、彼を通じて描かれるHONDAのエピソードは実に面白い。
例えば、HONDAはついにジェット機の販売に成功しましたが、そこに至る本田宗一郎の思いが、なんとここに描かれているんです。
また、ロレンスでも宮崎記者が紹介した楕円ピストンについても、ストーリーと関係なく登場し、技術に関するHONDAの意地と誇りをギンギンに紹介しているのです。(このくだり、あとで何かに繋がってくるのかなと思いきや、立ち消えしちゃってます)
いくら国際化が進もうがHONDAは本田宗一郎(オヤジ)が創設した技術研究所そのもの。だからHONDAはいつまでも本田技研工業株式会社なんだ。
さらに、柳さんはいいます。
「ホンダ・カーは、ホンダエンジニアリングラボラトリー(本田技研)から車という形になって発表される研究成果」なのだと。だからHONDAの正式名称はいつになっても本田技研(本田技術研究所)なんだと。
もう、しびれるくらいのHONDA愛。
このエピソード、実にしびれて、トーマス来年HONDA車買おうと考えちゃったくらいなんです。
さあ、みなさんも、本作をいますぐ買って、新谷ワールドを楽しむと同時にHONDA愛に染まってください。