思わぬ過失で罪なき人間を死なせてしまったアル中のNY市警マット・スカダー刑事。彼は警察を辞して、無免許の私立探偵として細々と暮らしている。
その彼に舞い込んだのは、妻を誘拐されて惨殺されたドラッグディーラー ケニーから犯人を探して欲しいという依頼だった。
一度は断ったものの、ケニーの妻が細切れの肉片に切り刻まれたことを知り、彼は依頼を引き受ける。すると、同じようにドラッグ関連の関係者ばかりを狙う猟奇的な誘拐殺人を繰り返す謎の容疑者が浮かび上がってきた。そのとき、今度は他のドラッグディーラーの娘が誘拐される。
古典的な探偵小説のようなハードボイルド
またもリーアム・ニーソンの映画を見てしまった。完全にファンのようだな(苦笑)。
彼が演じるのは、非番の日にたまたま出くわした強盗殺人の犯人たちを射殺したものの、関係のない少女を流れ弾で死なせてしまったというトラウマを持つ、元刑事マット。
だから彼は、誘拐された少女を救うことが、贖罪になると考えたのかもしれない。マットは必死になって誘拐犯との対決に挑むのである。
本作は、非常に正統派のハードボイルド探偵小説の文法通りに作られている。
偶然知り合い、マットの手伝いをすることになる黒人少年T.Jとの心の交流は、探偵に憧れるT.Jの口から出る、探偵小説のヒーローたち(サム・スペードやフィリップ・マーロウ)にも似て、ただハードでタフなだけでなく、傷ついた心を隠しながら生きている人間の優しさを表現している。
黒人少年と中年探偵の心のふれあいが救いとなる作品
本作の登場人物は、みな 神に懺悔したくなるような過去を持っている。
マットの仕事の依頼人はみなドラッグディーラーだし、誘拐殺人を繰り返す犯人たちは完全なる異常者だ。マット自身、何年も前に意図せず犯してしまった過失にいまだに苦しんでいる。
その中でT.Jとの関わり合いだけが、マットの心を癒し、観ている僕たちの救いにもなっている。猟奇的殺人をテーマに描かれた作品だけに、全体として爽やかなモードには縁遠いのだが、ませてはいるものの 少年らしさは無くしていないT.Jを、どうしても放っておけず、同時に信頼していくマットの心持ちと視線が、この作品の後味を良くしている。