そのドラえもんが3Dアニメに。
気立てはいいが、気弱で勉強も運動も苦手な少年のび太
野比のび太は、どこにでもいるような凡庸な少年。のび太という名前は、のびのびと育つように両親が命名したのだという。
彼はクラスメートたちにときに軽んじられ、いじめられる。
陰湿ないじめではないので、登校拒否するほど思い詰めることはないが、自分の弱さにはうんざりする。
そんなのび太のマドンナはクラス一可愛い、源しずかこと、しずかちゃん。
彼女の存在がのび太の心の救いである。
絶望的な事実を知ってしまうのび太
ところが、突然現れた見知らぬ少年と、寸胴な不思議なロボットたちが、のび太の希望を打ち砕くような予言をする。
彼の将来の花嫁は、しずかちゃんではなく、ジャイアンの妹のジャイ子だという。そして、未来の生活は今以上に凡庸で面白くないものであると知るのである。
未来を変えるためにやってきたドラえもん
驚き、落ち込むのび太に、ドラえもんたちは、彼の未来を変えにきたのだと告げる。
のび太の生き方を変え、”過去”(今ののび太にとっては”現実”である)を変えることで、未来を変えるのだと。
ドラえもんは四次元ポケットを駆使して未来のさまざまな道具を取り出し、のび太のピンチを救い、生活を一変させるのである。
別れは突然やってくる
しかし、ドラえもんとの楽しい日々は長く続かなかった。
ドラえもんはある日、のび太に「未来に帰らなければならなくなった」と告げる。
ドラえもんは、のび太の辛い毎日を楽しいものに変えたが、のび太自身の性格を変えられたわけでもなければ、未来を積極的に変えるための努力を継続させたり、強い意思を持たせられることに成功したわけでもなかった・・。
自分が帰ったあとで、自分がいなくても頑張ってくれるよう、ドラえもんはのび太に懇願するのである。
のび太が自分自身の足で立ち上がった瞬間
二人の別れの日は近づき、やがてその当日がやってきた。
ドラえもんとの別れを受け入れられないのび太は、一人家を出る。そこでジャイアンに出会ったのび太は、ジャイアンのいじめに遭う。
思わずドラえもんに助けを求めようとしたのび太だったが、すぐに思いとどまるのだ。今後はドラえもんなしで生きていくのだ。自分がしっかりしなければ、ドラえもんは安心して未来に帰れない。
そこでのび太はジャイアンとの決闘に一人で挑むのだ。
何度殴られて、投げ飛ばされてものび太は諦めない。何度でも立ち上がり、ジャイアンに向かっていく。
その根性にやがてジャイアンはくたびれ、自分の負けを認めて逃げ去っていくのである。
そこに、のび太の不在に気づいたドラえもんが、のび太を探しに来る。公園でノビているのび太に駆け寄るドラえもんに、のび太は「勝ったよ、一人でジャイアンに勝ったんだよ」と伝えるのだ。
朝起きると、ドラえもんの姿はなかった。
押入れには、ドラえもんの布団がきれいに畳まれていた。
幻の最終回を軸にして、さまざまなエピソードを絡めたオリジナル映画
この作品は、初期のドラえもんの最終回(ドラえもんは実は一度連載を終えたのだが、あまりに大人気で惜しむ声が多くて復活して今に至っているのだ)を軸に、のび太とドラえもんの友情と、優しいが、だらしなくて情けない少年が、徐々に勇気を持った気持ちの強い大人へと変わっていくさまを、さまざまなエピソードを絡めて描いている。
日本人なら、誰でも心の中にドラえもんがいる。
どんなときも自分を見捨てず、そばに寄り添ってくれる友人の姿。それは確かに、いつでも丸くてずんぐりとした影を持っているのである。