伏線が多い、非常に複雑なストーリー
日本でも愛読者の多い、SF小説の大家 ロバート・A・ハインライン原作。
主人公のジョンは、過去は女性であったが、出産の際に発覚した、両性具備という身体的問題の解消のため、性転換を余儀なくされて男性として生きている。
偶然立ち寄ったバーで、バーテンダーから20ドルかボトル1本を賭けて、面白い話をしてみろと挑発されたジョンは、自分の数奇な身の上話を始める。
孤児院で育ったこと、不思議な政府機関にスカウトされたが、妊娠が発覚したためチャンスを棒に振ったこと、お腹の子の父親は出産前に失踪し、殺したいほど憎んでいること、そして赤子もまた何者かにさらわれてしまったこと。
すると、話を聞いていたバーテンダーは、自分は時空警察の捜査官であり、ジョンをスカウトしにきたと話を切り出し、憎む男を殺すチャンスを与えるから、自分の後継者として捜査官になれと言う。
半信半疑のジョンだが、バーテンダーは彼の前にタイムマシンを見せて、過去へとタイムスリップをする。
パラドックスではなく、輪廻
バーテンダーとしてジョンに接触してきた捜査官は、ジョンをスカウトするだけでなく、もう一つ大きなミッションをおいかけていた。
それは全米を震撼させていた爆弾魔フィズル・ボマー(不完全な爆弾魔)を捕まえることだ。捜査官の必死の追求をあざ笑うかのように、フィズル・ボマーは逃げ通していく。バーテンダーは、ジョンを時空警察へと誘う傍、ボマーを追うが、彼には引退の時期が近づいていた。
バーテンダーとジョン(ジェーン)の秘められた関係、なぜか爆弾魔の行為を肯定しているかのような言動をする時空警察のメンバーへの不信など、この映画はラストに明かされる衝撃的な事実に向かう、複雑で入り組んだ伏線がちりばめられている。
一言で説明できる映画ではない。
予備知識がないと、複雑なストーリーに飲み込まれてしまうかもしれない。できるならば、ある程度ネタバレ覚悟で原作である「螺旋の蛇」をちらりとでも読んでおいたほうがいいかもしれない。