2015年9月5日(土)清里・八ヶ岳少年自然の家において、YAMAHA MT-01 10th Aniversarry 全国オーナーズミーティング「The MT Firstborn」が開催された。イベントタイトルとなっている「The MT Firstborn」とは、ヤマハの主力マシンの一翼をになうMTシリーズの「01」、最初に誕生した“長兄”という意味がこめられているそうだ。
アメリカンバイクのXV1700系空冷Vツインエンジンを搭載した、ネイキッドスポーツバイクとして2005年に登場したYAMAHA MT-01。その斬新すぎる構成とスタイリングからか、国内ではあまり販売がふるわず、2009年モデルを最後に5年という短命で生産を終えたモデルだ。世界でも他にあまり類をみない、このユニークなスポーツバイクはいまでも世界中に愛好家がいる。
私もこのMT-01はずっと気になっていて、ロレンスでも特別に 試乗インプレッション を掲載したほどだ。そんなMT-01が発売されてから、ちょうど10年にあたることを記念して開催されたオーナーズミーティング。日本全国からMT-01を愛してやまない“変わり者たち”が愛車を走らせて、早くも初秋の高い空が広がる山梨県清里に集まってきた。総勢63台ものMT-01が並んでゆくのは壮観な眺めである。
これまでもバイクのオーナーズミーティングは、あらゆる車種で開催されてきたと思うが、そもそも珍しいMT-01ばかりが一同に集まる様子は、なかなか目を見張るものがある。そしてこの個性的なマシンに惚れた男たち(女性のオーナーはお一人もいませんでした ^_^;)もまた個性的な方が多いのか、1台として同じマシンはない。1台1台にオーナーの思い入れが匂い立つようだ。
それに対して、参加者たちの多くが事前受付で送付された、イベントロゴの入ったオフィシャルTシャツを着てやってきた。このTシャツのデザイン自体もクオリティが高く、MT-01のオーナーならずとも欲しくなるだろう。こういうところが意外と大切なんだよなぁ。揃いのTシャツを着た参加者たちの期待感や連帯感も、このカッコよさにおのずと高まったことと思う。
全国オーナーズミーティングというだけあって、遠方は九州からはるばる走ってきた方も数名いらっしゃった。主催者代表の杉浦 拓也さんにお話を伺うと、元々はmixiやFacebookのコミュニティからスタートしたとのこと。ただ、杉浦さんたちは顔の見えないネットコミュニティをよしとせず、お互いがリアルに会って飲み会などを開催するのに、そう時間はかからなかったという。
そうして集まり始めた仲間たちとともに、2年前の2013年5月に静岡県磐田市のヤマハ本社にあるコミュニケーションプラザで、MT-01絶版記念オーナーズミーティングを開催することとなる。杉浦さんたちは、この第一回となるミーティングをヤマハ側の協力も得て成功させ、全国規模でMT-01オーナーを集めるイベントへと発展させていったようだ。
8月末から天候不順が続いていた関東甲信越地方だが、この日はぽっかりと清々しい晴天となった。とはいえ、いつ雨が降り出してもおかしくない上空をにらみつつ、全員で走るパレードランから記念撮影へ。さすがに63台ともなると、パレードランでは隊列がはるか彼方まで続く。誰かれとなく「総排気量にして10万cc以上だ!」という冗談ではない事実に笑い合う。
ミーティング会場に戻り、この日のメインイベントといえる特別講演へ。モーターサイクルジャーナリストの柏秀樹さんによる講演は、MT-01の乗りこなし方からバイク一般のストリートライドでの極意まで、目から鱗が落ちるような内容に思わず聞き入ってしまう。第二部はこの日のためにお集まりになった豪華パネラーによる座談会となり。
写真左から、ヤマハ発動機・MC事業本部・第2事業部・主管・牧野浩氏、モーターサイクルジャーナリスト・柏秀樹氏、元MT-01開発者である琴岡健太郎氏(現・JBR Motorcycle)、モーターサイクルジャーナリスト・宮崎敬一郎氏、GKダイナミックス・動態デザイン部・副部長・飯村武志氏、ヤマハ発動機・デザイン本部・コーポレートデザイン部・西村慎一郎氏。
MT-01という唯一無二のマシンは、この方たちの熱意によって誕生したといっても過言ではないだろう。企画から実際の開発に関わっていた方たちによる、数々の逸話や裏話はよそではまず聞くことができない貴重なものだ。その内容はデザイン開発から専門的な技術データにもおよび、MT-01に限らず1台のマシンが開発されてゆく過程を知ることができ、とても興味深いものだった。
天上天下唯我独尊という言葉が仏教にある。「唯だ、我れ、独り、尊し」。このミーティングを眺めながらこの言葉が浮かんできた。イベントの間中、参加者から口々に自らを「変わり者」とか「変人」というのを聞いた。それは取りも直さず、MT-01というメジャーではないが、一般的にはあまり知られていない、魅力に溢れた希有なマシンを愛する、自分たちを認め合う言葉なのだろう。このMT-01オーナーたちの唯我独尊に、バイク乗りという人種の“心粋”をみた、と言ったらおおげさだろうか。
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