出光イーハトーブトライアル大会。今年で第39回を迎える歴史のあるトライアル大会が、8月29日(土)・30日(日)に岩手で開催される。この大会をご存知の方も少なくないと思うが、トライアルはモータースポーツの中でも、ロードレースやモトクロスにくらべて、関心が低いかもしれない。かくいう私も、バイクに乗るようになり30年以上たってから、トライアルという素晴らしいモータースポーツに出会い、スポーツとしてバイクを操る奥深さに魅了されてしまったのだ。
トライアルという競技を簡単に説明する。基本的には道のない自然の中に設けられた、セクションとよばれるルートを、いかに足をつかずに走破できるかを競うスポーツだ。スピードを競うモータースポーツと違い、足をつくごとに減点されるルールから、スポーツの中ではゴルフに近い。トライアルはスコットランドが発祥というから、それもうなずけるものがある。
私は若い頃からオフロードバイクが好きだったので、モトクロスやエンデューロレースはそこそこ楽しんできた。多くの人と同様に私も社会人として忙しくなると、オフロードスポーツから遠ざかっていたが、ちょっとした機会があり2010年からまたモトクロス場に通い始め、再びオフロードスポーツを楽しむようになった。その頃に集まりはじめたオフロード仲間で、誰がいい出したのか自然発生的にトライアルも始めるようになる。
初めてまたがるトライアルマシンにはただただ戸惑った。これ以上ないほど軽量でスリムに設計された車体には、基本的に座るためのシートはなくスタンディングでライディングする。普通のバイクと大きく異なっているのはミッションだ。レース用のクロスミッションを搭載しているモトクロッサーといえども、公道用のバイクとそれほど違うものではない。ところがトライアルマシンのそれは、スピードを出すことを想定していないため、3速でも普通のバイクのローギアほどでしかない。たいていは2速で走り、1速を使うケースはあまりなく、勢いをつけて急な斜面を登る時に3速を使うくらいだ。
歩くようなスピードで走るのも想像以上に難しい。バイクというのはある程度のスピードで走ることにより、車体が自然と安定するようになっている。一般道でも信号で止まる時など、車体がフラフラと安定しないのは、初心者ならずとも感じるところだと思う。そんな極低速で、森の中の岩や切り株があるデコボコな地形を走るのは至難の業だった。車歴30年を超えモトクロスなんかもかじって、多少はウデに自信のあった私は、トライアルによって初めてバイクに乗り始めた、初心者のようなレベルなのだと気がつかされる。そしてバイクを操るというのは、こんなにも奥の深いものなんだと感じ入ることとなったのだ。
そうしてトライアルマシンを乗りこなすことに夢中になり、“バイク初心者”となった私たち。それこそ時間が許せば、毎週のようにトライアルを楽しんでいた。縁があり全日本トライアル選手権 国際B級(当時)の方をはじめ、トライアルの師匠となる“ベテラン”の方たちと出会うと、手探りだった頃から徐々に実際のテクニックを身につけ始める。その師匠たちのすすめで、いくつかの初心者向けトライアル大会にも出場すると、はじめてから1年後には「出光イーハトーブトライアル大会」にエントリーするにまでいたったのだ。
【出光イーハトーブトライアル大会】そうだ!トライアルをやってみよう[後編]へ続く
※写真は2013年出光イーハトーブトライアル大会のものです。