ご存じの読者もいらっしゃるかもしれないが、ロレンス編集部は、カワサキ乗りが多い。さらに二上編集長同様、発行人である僕もまた空冷Z乗りだ。

僕の愛車はKAWASAKI 750RS。通称ZIIだ。
通常であれば、Z2と書くべきなのだろうが、『あいつとララバイ』世代の僕にとっては、ゼッツーはあくまでZIIなのである。

このZIIを手に入れたことは僕にとって、運命的な出会いであり、人生における転機であった。たかがオートバイ、という人もいるだろうが、このZIIは、僕にとっては他の何モノにも変えがたい、文字通りかけがえのない存在、なのである。

Z2ではなく ZIIと呼ぶ理由

『あいつとララバイ』は1981-1989年の8年間、講談社の「少年マガジン」で連載されたバイク漫画だが、この漫画が始まった時点でZIIは既に旧車扱いだった。古臭いバイク、時代遅れ、オッサンバイクと嘲笑されるシーンも多く見られた。

オートバイを主役にする漫画は1980年代から90年代にかけて、数多くあった。古くは「750ライダー」から始まって「バリバリ伝説」「キリン」など、名作が輩出されていた。
しかし『あいつとララバイ』だけは他のバイク漫画と一線を画す大きな特徴があった。それは他の漫画達は”バイクが好き”だったり”スピードが好き”だったりしたものだったが、『あいつとララバイ』だけは、ZII好き、の少年の物語だったのだ。

他のライダー達は愛車を乗り換えたり、より速いスピードを求めてサーキットへと舞台を移していくが、『あいつとララバイ』の主人公 菱木研二は、ZIIとのパートナーシップを解消するようなことは決してなかった。というよりも、『あいつとララバイ』の主人公は研二でありZIIなのだった。
他のバイク漫画には決して現れない、バイクと乗り手の同調性がこの作品の特徴なのである。

画像: 永遠のバイク少年 菱木研二の愛車に対する接し方に惚れる。ー『あいつとララバイ』 - LAWRENCE(ロレンス) - Motorcycle x Cars + α = Your Life.

永遠のバイク少年 菱木研二の愛車に対する接し方に惚れる。ー『あいつとララバイ』 - LAWRENCE(ロレンス) - Motorcycle x Cars + α = Your Life.

大好評の(?)、エンターテイメントの中のバイク乗りたちシリーズ。
今回は、楠みちはるさんの傑作『あいつとララバイ』(講談社 少年マガジン 1981-1989年連載)です。
主人公 菱木研二は非行で1年留年した、ナンパな不良。初期はラブコメ要素が強かったのですが、徐々に速い公道レーサーたちとのバトルを軸に物語が進むようになり、やがて『バリバリ伝説』にならぶ、バイク少年のバイブルになるんです。
この作品の特徴は、他のバイク漫画と違って、主人公とバイクが一体化したような関係性が成立していることです。
研二くんは女の子には目移りしても、自分の愛車ZII(ゼッツー。カワサキ 750RS)には盲目的な愛情を注ぎます。最初から最後まで同じバイクに乗り、そして最後まで同じようなスタンスで物語が進む作品は、他にあまりないと思います。
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日本国内で、カワサキの空冷Zの祖である ZI(ゼットワン)よりも、弟分であるZII(ZIは海外仕様で900cc、ZIIはそのスケールダウンの国内市場専用車で750cc)のほうが、高値で取引されている現状は、もちろんZIIが国内専用車だったことから玉数が少ないということもあるでしょうが、やはり、『あいつとララバイ』の影響が大きいと思います。
作者の楠みちはるさんは車好きでも有名で、車とナンパが好きな少年たちのコメディ『シャコタンブギ』や、悪魔のZのフレーズで有名な『湾岸ミッドナイト』などの傑作がありますが、その主人公たちも同じように自分の愛車を、単なる車以上の対象として、とても大事にしています。ある意味、恋人以上のパートナーとしてみているんですね。
研二くんもなんどもなんどもZIIを壊してしまいますが、その度に一生懸命直して乗り続けます。連載当時でさえ、すでに古臭いバイクとして登場するZIIですが、彼の愛情がZIIをスーパースポーツ並みの速さと魅力を持つ一台へと昇華させてるんです。
われわれも、とっかえひっかえせず、自分のパートナーをきちんと大事にする、そういう心構えが大事なように思います。そんな当たり前のことを感じさせてくれる良作なんですよ、『あいつとララバイ』は。

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ZIIに憧れながら縁がなかった時期

画像: ひょんなことから僕の手元にやってきたZII

ひょんなことから僕の手元にやってきたZII

『あいつとララバイ』に影響を受けた僕だったが、前述したように連載が始まった時点で既に、ZIIは生産終了されて10年以上が経っていたし、僕がオートバイを自分のお金で買えるようになった頃には、中古市場でも値段が高騰しつつあった。

そこで僕は他の選択をした。確かにZIIは憧れのバイクだったが、90年代以降の日本国内市場には、他に魅力的なオートバイがたくさんあったからだ。

その後数年の海外生活を経て、数台のオートバイを乗り継いだ僕は、帰国すると日常の足としてベスパに乗るようになった。しかし、よりパワフルなバイクも捨てがたかったため、一度も乗ったことがない、アメリカンを試してみようと思い、同時にハーレーダビッドソンのスポーツスターを手に入れた。

もうこれでいいかと思うほど愛していたVespa PX200FL2

スポーツスターはよいバイクだったが、アメリカンは性に合わなかったらしく、ほどなく手放した。最初から乗るなよ、と言われそうだが、乗ってみないとわからないこともある。
また、道交法が厳しくなっていたおりで、スポーツスターのために、家から30分以上歩かなければならないところに駐輪場を借りていたので、それもいろいろ負担になっていたのである。(マンションの駐輪場にはベスパを置いていた)

ちなみにベスパは大好きな松田優作の名作(奇作ともいえる)『探偵物語』の影響だ。
主人公、工藤俊作探偵の愛車である白いベスパ PX150と同じ型である、ベスパ PX200FL2を購入したのである。

画像: www.toei-video.co.jp

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画像: 松田優作扮する工藤ちゃんこと探偵 工藤俊作 www.toei-video.co.jp

松田優作扮する工藤ちゃんこと探偵 工藤俊作

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画像: 2002 - 2014年までの愛車ベスパPX200FL2。初代と二代目があって、これは廃車になった初代。故障がちで、クランクが割れて完全に壊れるまで数回入院するほど手がかかった。

2002 - 2014年までの愛車ベスパPX200FL2。初代と二代目があって、これは廃車になった初代。故障がちで、クランクが割れて完全に壊れるまで数回入院するほど手がかかった。

ベスパはちょっとしたことで機嫌を損ねるし、ガソリンだけでなくオイルを別に補給したり、わりと頻繁にプラグを変えてやったりと、まぁまぁ手がかかったが、楽しいバイクだった。遠出には向かないが、軽くて扱いやすいし、ハンドシフトやフットブレーキはユニークで、乗っていて飽きなかった。

自分のバイク遍歴は、もうこれで終わり。クルマもあることだし、バイクはもう一生ベスパでいいか、と思うようになって数年経った去年(2014年)の夏、突然状況が変わる。

衝撃的なZIIとの出会い

2014年の8月初旬の話だ。

ある人物と食事をしていた際に、偶然オートバイの話になり、その人が自分の愛車を売りたいと思っていると言ったので、車種は何かと聞くと「カワサキのZII」だという。

その瞬間に僕の頭と胸の中で何かがスパークした。

「買います、それ。僕に売ってください」
思わず僕はグラスの酒を少しこぼしながら叫ぶように言ったのだ。

画像: いまさらながら気づいたが、6月のロレンスツーリング以来タンデムステップが出しっぱなしだ・・・

いまさらながら気づいたが、6月のロレンスツーリング以来タンデムステップが出しっぱなしだ・・・

ZIIは40年前のバイクだ。古臭い、ではなく、古い。文字通りのクラシックバイクである。
中古車市場でのタマ数はだいぶ減っており、市場に出ている車両も品質が悪いものが相当に混じっているきく。
しかし、僕が譲渡を願い出た相手は、その意味で信頼できる人物であったし、彼が乗っているのであれば程度は良いものであると確信できた。だから僕はためらいなく(実車を確かめることもなく)「買いたい。他の誰にでもなく僕に売って欲しい」と懇願したのである。

その人はとても驚いていたし、「他にも売ってくれと何人にも言われているのでちょっと待って欲しい」と言われたが、その後僕は数回にわたってZIIを譲って欲しいと連絡し、ほどなく快諾いただいたのだった。

(余談だが、このZIIの話をした店と同じ場所、同じ席で、僕はロレンスの二上編集長と初めて会った。これもまた偶然であり、必然であったといえるだろう)

ZIIに一生乗り続ける。研二くんのように。

2014年8月31日。
夏の終わりに僕はZIIを受け取り、翌日 自分名義の新しい車検証とナンバープレートを手に入れた。
少年の頃に憧れたオートバイに、ついに僕は出会い、名実ともに愛車として迎えることができたのである。

そのかわり。ZIIを手に入れるために、僕はベスパを手放した。

二台置く場所がないのと、毎日乗れるわけではないので、少しでも手をかけようと思えば、二台あっても結局ZIIを選ぶことになり、それではベスパがかわいそうだ。
機械は、特に古い機械というものは動かしてあげないとすぐに古びてしまう。今の僕のワークスタイルでは二台を十分に愛してあげられない。ましてやクルマもあるのだ。
十分に愛してやれないのであれば、他の もっと大切にしてくれる人のもとにゆくほうがよい。それが僕の決断だった。

その代償として、別れを告げたベスパのためにも僕は自分自身に掟を作った。雨や雪でもない限り、寒かろうが暑かろうが週に一度は必ずZIIに乗る。たとえ短い時間だろうと走らせる。それができないなら乗る資格がない。そう思ったのである。

さて。

手に入れたZIIは、写真のとおり、いわゆる火の玉カラーのキャンディトーンブラウン。典型的なZIIカラーだ。マフターは最初から黒い直管がついており、エンジン周りも若干スープアップしてあった。入手してすぐに車検だったので、その機会に自分に合わせてハンドルとブレーキケーブルは交換した。

常にほぼ最新型のバイクしか乗ってこなかった僕には、最初はZIIの重さや、効かないブレーキに戸惑った。しかしそれもすぐに慣れた。
それまで乗ってきたカワサキの大型車と比べると非力だったが、スピードを出して走ろうという気を起こさせなくて、かえっていいと思えた。そもそも比べること自体が間違っている。

KAWASAKI 750RS|Z2
エンジン Z2E型型 746cm3
空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒
内径x行程 / 圧縮比 64mm x 58mm / 9.0:1
最高出力 69ps/9,000rpm
最大トルク 5.9kg-m/8,500rpm

僕にとって、運命的な出会いをして、何十年もの想いをいきなり埋めて僕の前にやってきたのが、このZIIなのだ。そして、このZIIと出会ったことで、さまざまな新しい時間軸が生まれ、それぞれの時計の針が動き始めた。

そもそも、このZIIと出会わなかったら、ロレンスは始まっていない。ZIIを手に入れていなかったら出会っていない人も多い。

これまで何台ものオートバイを乗り継いできている僕だが、ついに二度と手放せない、他と比べることも許されない本当の愛車に巡り合ってしまった。

ガソリン車がいつまでこの世を走り回っていて良いのかはわからないが、一生モノと呼べる大切なモノがどんどん消え失せていく現代において、このZIIに出会えたことは僕の人生のギアを確実に一つ切り替えた。
ギアを上げたのであればより速度を上げろ、下げたのであれば次の加速に備えていけ、というメッセージであると思うようにしているのだ。

僕はもう一生オートバイメーカーさんの売上に直接貢献できないかもしれないw
しかし、その代わりといってはなんだが、オートバイという文化の振興の一助になりたいと思い、今後ともロレンスの運営を続けていきたいと思っている。

画像: 斜め後ろと、この角度がお気に入りである

斜め後ろと、この角度がお気に入りである

画像: カラーリングを変えてみたいが(ブラックが好みなので)いじってはいけない気もしている

カラーリングを変えてみたいが(ブラックが好みなので)いじってはいけない気もしている

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