兄を亡くした天才少年と、兄の遺産のベイマックス
主人公ヒロ・ハマダは14歳ながら、ロボット工学の天才児だ。彼が暮らすのはサンフランシスコと東京のハイブリッドな仮想シティ サンフランソウキョー。ヒロは金を賭けて自作のロボット同士を戦わせる「ロボット・ファイター」に夢中である。
そんなヒロの将来を憂う兄のタダシは、自分が通う大学にヒロを連れていき、ロボット工学の先駆者であるロバート・キャラハン教授に会わせる。タダシの思惑通りにヒロはキャラハン教授の教えを受けることを熱望するようになるのだが、ヒロが大学への入学を許されたその日に大学構内で謎の大爆発が起き、タダシとキャラハン教授は悲劇的な死を遂げてしまうのだ。
タダシの死を受け入れられず、ヒロは何もしたくなくなるのだが、あるとき、タダシの死が、ヒロが発明した超小型の万能ロボット(マイクロボット)を悪用するために盗み、それを隠蔽するために起きた火災のせいであることに気づく。そんな彼の前に現れたのは、タダシが開発していた、人間の心と体を看護するケアロボット、ベイマックスだった。
誰も傷つけることができず、何も破壊することができない完全なケアロボットであるベイマックスを、ヒロはリプログラミングし、戦闘能力を備えたパワフルなロボットに改良し、真相を突き止めるため行動を開始する・・・・。
CMでは想像つかない、ロボットアクション映画
本作は、少なくとも日本のマーケティングでは、100%ケアロボットとトラウマを抱える少年のハートフルムービーという形で紹介されてきたが、実際にはかなりのアクションアニメーションだ。
実は、本映画の制作はピクサー(そもそもピクサーの映画には、爽快な冒険と感動が不可欠)だが、原案はマーベルのスーパーヒーロー物コミックなのだ。
主人公ヒロは、ベイマックスだけでなくタダシの学友たちを武装化し、兄の仇を探す冒険を始める。
このあとの話はネタバレになるので避けるが、「ベイマックス」は「トイストーリー」や「Mr.イン
クレディブル」同様に、冒険と友情(もしくは家族愛)の話であり、単なる感動モノ、ではない。
もちろん、逆にアクションだけを楽しむ映画でもなく、活劇のあとには心が洗われるような温かい”ケア”が待っている。
子供だけに楽しませるのはピクサー(あるいはディズニー)にとっても本意ではなかろう。
大人の男が、もしくは恋人同士で見ても十分に楽しめる。それがベイマックスなのだ。