現地時間12日、マン島で開催されたライトウェイトTTの決勝が行われました。650ccまでのツインエンジン車で競われるこのクラス、圧倒的多数を占めるのはカワサキのER-6fです。エントリーリストを見ると、ワンメイクかよっ!とツッコミを入れたくなるくらい、ER-6fのエントリーが多数を占めています。

「パトン」の名前をご存知ですか?

今年のライトウェイトTTの勝者はER-6fを駆ったアイヴァン・リンティンでした。この勝利は、彼にとっての最初のTT勝利です。2位も同じカワサキのジェームス・ヒリアー。そして3位に入ったのが、名手トニー・ラッターの息子である、マイケル・ラッターでした。

画像: カワサキER-6fを駆るリンティン。なおカワサキのツインエンジンは、AMAのダートトラックでも活躍しています。日本では全く人気がないですが、「隠れ名車」と言えるのではないでしょうか? www.iomtt.com

カワサキER-6fを駆るリンティン。なおカワサキのツインエンジンは、AMAのダートトラックでも活躍しています。日本では全く人気がないですが、「隠れ名車」と言えるのではないでしょうか?

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ラッターが乗ったマシンは、イタリアのパトンというメーカーのS1というモデルです。このパトンを除き、今年のライトウェイトTTは1〜17位がカワサキだったのですが、唯一気を吐いたのがラッターとパトンだった、というわけですね。もっとも、このパトンS1のエンジンもカワサキツインなので、このクラスにおけるカワサキツイン強し・・・という印象は拭えませんけど。

画像: パトンS1を駆るマイケル・ラッター。ドゥカティライダーとして活躍した父トニーは、TRロゴを額に記したヘルメットを被っていましたが、息子マイケルは同じグラフィックのMRロゴを配したヘルメットを被っております。 www.lerepairedesmotards.com

パトンS1を駆るマイケル・ラッター。ドゥカティライダーとして活躍した父トニーは、TRロゴを額に記したヘルメットを被っていましたが、息子マイケルは同じグラフィックのMRロゴを配したヘルメットを被っております。

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パトンはそもそも、1957年にイタリアの名門F.B.モンディアルが世界ロードレースGPから撤退した後、チームのメカニックだったジュゼッペ・パットーニが興したチームでした。主に1960年代は4ストローク2気筒のGPマシンを作って参戦。そして1970年代以降、2ストロークがロードレースの世界を席巻するようになると、パトンもその流れを汲んで2ストロークの500ccGPマシンを製作し、零細チームながらGPへの挑戦を続けました。

画像: 1960年代を中心に、パトンは500ccをメインに世界ロードレースGPに空冷2気筒DOHCのマシンで参戦を続けました。 www.metzeler.com

1960年代を中心に、パトンは500ccをメインに世界ロードレースGPに空冷2気筒DOHCのマシンで参戦を続けました。

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画像: 1975年からパトンは2ストローク4気筒のGPマシンを製作。そのチャレンジは、ジュゼッペが死去した1999年の2年後の、2001年まで続きました。 rkovacic.com

1975年からパトンは2ストローク4気筒のGPマシンを製作。そのチャレンジは、ジュゼッペが死去した1999年の2年後の、2001年まで続きました。

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大手メーカーが、コマーシャルなどビジネスの側面を目的で参戦し、社内事情で出場・退場を繰り返すグランプリの世界において、純粋なモータースポーツへの愛で参戦を続けているパトンのようなメーカーは実に稀有な存在といえるでしょう。ジュゼッペの息子であるロベルトはブランドを受け継いだ後、1960年代を主に活躍した4ストロークGPマシンのレプリカを製作し(彼らに言わせると、パトンが製作しているのでレプリカではなく復刻、となる)、クラシックTTなどのヒストリック・ロードレースの世界で大活躍をしています。

画像: ヒストリック・ロードレースの世界で、最強と呼べるパフォーマンスを発揮しているパトン500。 europeanmotornews.com

ヒストリック・ロードレースの世界で、最強と呼べるパフォーマンスを発揮しているパトン500。

europeanmotornews.com

そのようなヒストリック・ロードレースの世界での成功に満足せず、パトンはモダンバイクの世界でのチャレンジを続けています。例え零細メーカーで、大メーカーに対して劣勢なのが明らかでも・・・。それは、父ジュゼッペの生き様を、息子のロベルトがなぞっているかのように・・・。

そんなパトンの在りように、エンスージャストならではの美しさを感じるのは私だけではないのでは? 単なる判官贔屓とはまた違う、モーターサイクルを愛する者への共感を、パトンには感じざるを得ません。

Presentazione PATON S1

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