ゼファーは、いま20代後半から30代初めの読者には、もっともなじみの深いバイクなのではないでしょうか?
400ccから750cc、1100ccの三つの排気量別にモデルがありますが、一番ゼファーらしく、そのスタイリングも完成されているのは、この400である気がします。
1980年代、レーサーレプリカ全盛時代にあって、WGP(現在のMotoGP)で活躍するバイクのレプリカモデルを持たないカワサキは、他社に対して劣勢になっていました。
オートバイ市場から撤退?という噂さえ出たカワサキを救ったバイクこそ、1989年に発売された このゼファーでした。
フルカウル全盛時代にカウルを持たず(裸、という意味でネイキッドと呼ばれました)、水冷エンジン全盛時代に敢えて空冷のアンダーパワーのエンジン、そして二本サス。
1970年代の名車 Z2を彷彿させるスタイリングに、他のメーカーは「カワサキさんはついに昔の遺産にすがりついた」「あんな遅いバイク、売れるはずがない」と嘲笑したといいます。
ところが!
ご存じの通りゼファーはバカ売れしました。カワサキの挑戦を傍観していた他のメーカー達もこぞってネイキッドを投入し、その後のネイキッドブームを巻き起こしたのです。
ゼファーはその後 750ccモデルと1100ccモデルをラインアップに加え、社会現象となるほどの大ヒットとなりました。みためは古臭くても、中身はさすがに最新のパーツで作られたバイクです。カスタムをすれば、相応に速くなる。
オトコカワサキを愛するバイク乗り達は、ゼファーをカスタムしてレーサーレプリカ(いまでいうスーパースポーツ)を打ち抜く!という野望に燃えだしたのです。
ゼファーはZ1やZ2などの本物の希少な旧車には乗れないけれど、昔ながらのオートバイに乗りたいと願う若者の心を掴みました。ゼファーをZ1やZ2のようにカスタムすることも爆発的に流行りました。
そして、ゼファー自体が発売になって四半世紀が経ついまでは、Z1・Z2の呪縛から自由になって、ゼファー自体がひとつのレジェンドバイクとしてのポジションを築きあげています。
そして、ゼファーシリーズの発端である、ゼファー400こそはその栄誉の受け手になるべきバイクなのです。