モーターサイクルムービーの傑作、『ON ANY SUNDAY 栄光のライダー』のなかで、ホンダ50に乗って華麗なエンドレスウィリーを披露する男の子のことを覚えていますか? 見たことがある方なら忘れるハズがないほど、印象的で見事なウィリーコントロールです。
天性のライダー、という言葉は彼のためにある
まめ知識、とか書いてみましたけど、有名なエピソードなので知っている人は知っているでしょう。この男の子は、のちにカワサキファクトリーパイロットとして、モトクロスの分野で数々の栄光を手にするジェフ・ワードその人なのです。
スコットランドのグラスゴー出身のワードは、4歳のころにアメリカに移住。ミニモトクロッサーの分野で敵なしの強さを誇り、1978年からFMF-スズキで本格的なモトクロスへの挑戦を開始します。翌年の1979年からはモトクロスキャリアのすべてをすごすことになるカワサキに移籍し、エースとして大活躍します。
1992年に引退するまで、15年間トップランクの選手であり続けたワードは、125、250、500ccすべてのナショナルタイトルを獲得するほどのオールラウンダーぶりを発揮。AMAナショナルの勝利数は56に達しています。またモトクロス・デナシオン(国別対抗戦)では、7度アメリカチームの勝利に貢献しました。
2輪引退後、4輪のIRL(インディレーシングリーグ)に転向したワードは、1997年のインディ500で3位に入り「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を獲得。1999年は2位に入りますが、残念ながらインディ500制覇は成し遂げられませんでした。
華麗なる2輪へのカムバック
2002年限りに4輪フル参戦を止めたワードですが、なんと2004年にはAMAスーパーモト選手権にエントリーし2輪にカムバック。周囲を大いに驚かせました。そしてなんと、当時43歳だった彼の半分の年齢のライダーたちを相手に、タイトルを獲得してしまうのです!
さらにワードは2006年と2008年のXゲームスのスーパーモト王者に輝き、2007年には2度目のAMAスーパーモト王者に就いています。2009年には再び4輪・・・今度はダートで競われる「ルーカスオイル・オフロード・レーシング・シリーズ」に参戦。わずか1ポイント差でタイトルを逃しましたが、その天才ぶりを見せつけました。
身長170cmほどと、さほど大きくない体格ながら、どんな乗り物も乗りこなしてしまうワードの才能は、モータースポーツ・アスリートのなかでもズバ抜けたものと言えるでしょう。こちらの「ON ANY SUNDAY」のトレーラーにも、チラっとワード少年の華麗なウィリーが映ってますので、ぜひご覧ください。