去る11月9日、国際モーターサイクルショー「EICMA2022」が開催されたイタリア・ミラノの地で、電動スクーターなどの2輪EV用交換式バッテリーを、標準規格化することを目的に生まれた「欧州コンソーシアム」こと、SBMC=スワッパブル・バッテリー・モーターサイクル・コンソーシアムの「ステークホルダー・ミーティング」が行われました。はたしてSBMCの「取り組み」の進捗状況は、現在どんな感じなのでしょうか・・・?

華やかなEICMA2022の舞台の裏で、地道に「標準規格化」への道を模索?

先日、2022年10月末にホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの4メーカーに、エネルギー企業のENEOS HDを加えたGachaco(ガチャコ)が日本国内におけるバッテリー交換ステーション営業開始のニュースをお伝えしました。

この動きはつまり、いわゆる交換式バッテリーの「国内コンソーシアム」がいよいよ本格始動したことを意味するのですが、一方で気になるのは大きな市場を対象とした「欧州コンソーシアム」・・・ホンダ、ヤマハ、KTM、ピアッジオがコアメンバーをつとめる、SBMCの標準化作業の進捗でしょう。

2輪メーカーなど21社と、政府、研究機関、学術機関などが該当するアソシエイツメンバー2団体が加盟するSBMCですが、11月9日にイタリア・ミラノで開催された「ステークホルダー・ミーティング」には、25社以上の企業が参加したとのこと! SBMC加盟企業以外の、参加企業の名は不明なのですが、交換式バッテリーの標準規格化を目指すSBMCへの注目は高く、今後も加盟企業は増えていくものと予想されます。

なおSMBCメンバー以外では、CEN-CENELEC(欧州電気標準化委員会)のモビリティ担当者ティエリー・ルグランと、欧州連合の環境政策を担うDG ENV (環境総局 )のセザール・サントス・ジル(循環型経済ユニット政策担当)という、欧州の重要機関代表者が参加し、議論の積み上げに貢献したそうです。

交換ステーション網構築には、SBMCの「ロビー活動」力が問われるかも?

11月9日に、イタリア・ミラノで開催されたSBMCステークホルダー会議の様子。

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欧州に限らず、多くの土地で毎日の通勤・通学など「日常の足」に使われているスクーターなどの小型車は、50ccや125ccのカテゴリーに属しています。そしてそれらは、最大11kWの出力という範囲に収まっているといえます。

その事実を踏まえ、SBMCは標準規格化されたバッテリーは、最大2kWhを蓄え、バッテリーパック1個あたり12kg以下の重量に収まる・・・のが望ましいと想定しています。また欧州の規制で低電圧機器(電圧クラスA制限)に分類される48Vが、電圧として採用されることになりそうです。

コンパクトな形状で12kg以下の重量に抑えるのは、スクーターユーザーに女性ライダーが多いことを考えると、無理なく扱うことができるようにするため大事な要件でしょう。また低電圧機器に分類させることは、ユーザーにとって交換、保管、充電などの作業が安全に行えるようにするために大事なことです。

SBMCのウェブサイトに掲載されている、標準規格化された交換式バッテリーと、交換ステーションの運用イメージ図。SBMCはバッテリー交換を、ユーザー自身の手で40秒以下の時間でできることを想定しています。

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現在のバッテリー技術で、2輪EVでの運用を難しくしている2大要因は、充電時間の長さと航続距離の短さをいえます。そのソリューションとしてSBMCが想定しているのが、スワッピングステーション・・・すなわち交換ステーション整備の取り組みです。

ユーザーにとって安全かつ便利な交換ステーション網を構築することができれば理想的ですが、それはまず、欧州や国際市場で既存および今後策定されるであろう規制に対応できる交換ステーションであることが大前提です。各国・各地域の細かな規制の違いに対応するのは大変なことと想像できますが、SBMCの政治に対する「ロビー活動」力が試されることになるかもしれませんね?

異なるブランド間の、2輪EV用バッテリー交換が可能に!!

SBMCが取り組む交換式バッテリー標準規格化は、異なるブランドの2輪EVに使えることを目標にしています。現状の報告として、SBMCは各社の自由な2輪EV設計を可能にして、なおかつ相互運用性を保証するために、必要な「バッテリー・パラメーター(条件)」のみを標準化する、と表明しています。

現在SBMCは、形状、機械的固定、コネクターなどの項目に集中して仕様を策定し、関連項目の特定を最終的に行なっているそうです。そして次のステップとして、バッテリーとそのインフラの持続性、およびサイバーセキュリティについて慎重に検討。そして今後のEUバッテリー規制に由来する潜在的な要件に沿って、相互運用性を保証するため通信パラメーターとステートマシンアーキテクチャを標準化していく予定・・・とのことです。

EICMA2022でホンダが発表した、初の欧州市場向けの電動スクーター「EM1 e:(イーエムワン イー)」。2023年夏頃に投入される予定のこのモデルは、ホンダが2輪EVなどに採用している「Honda Mobile Power Pack e:」を1つ搭載します。SBMCが「Honda Mobile Power Pack e:」を、標準規格化された交換式バッテリーに採用してくれると、いろいろスムーズに話が進む気がしますが・・・(日本の利益優先という、我田引水的発想?)。

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形状、機械的固定、コネクターの仕様が決まれば、この分野で先行している台湾GogoroやPBGN各社(いわゆるGogoro連合)が使用している「スマートバッテリー」みたいに、SBMC加盟の2輪メーカー間で同じ交換式バッテリーが使えます。

さらに将来バッテリー技術がアップデートされた場合も、SBMC規格採用の旧2輪EVに性能が上がった新型バッテリーを搭載できるようになります(乾電池を使う製品に、より高性能の新型乾電池が使える、というイメージですね)。

来年・・・2023年は各メーカーの「電動化」への取り組みがさらに加速することが予想されますが、2023年度の早い段階にSBMCの標準規格化された交換式バッテリーの仕様が公開されることになるかもしれません? SBMCの今後の動向を、注視していきたいです!