その登場が予告されていたカワサキの新作電動モデルですが、その正体が明らかになりました。それはいわゆるキッズ向け電動モトクロッサーよりも、より「乗り物」のビギナー向けのバランスバイクの電動版・・・その名もエレクトロードでした!

そもそも「バランスバイク」とは?

6月7日に公開が予告されていたカワサキの「エレクトロード」は、3〜8歳の子供を対象とした電動バランスバイクです。バランスバイクとは本来"駆動輪のない"バイクであり、ライダーが足で地面を蹴って動く乗り物です。駆動輪によって保たれる自立性がなく、ライダーがバランスをとって走る乗り物だから、バランスバイクと呼ばれるわけです。

1820年ころに、ドイツのカール・ドライスが作った"ドライジーネ"。バランスバイクのほか、ランバイク、ノーペダルバイク、そしてキックバイクとも呼ばれる現代の乗り物の原型ともいえます。

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トレックのバランスバイク。補助輪を付けた自転車を与えるよりも、子供がバランス感覚とステアリング操作感覚を早く習熟することができる乗り物として、バランスバイクは世界的に広く普及しています。

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ホイールインモーターを備えるエレクトロードを見て、「ちゃんと駆動輪があるのにバランスバイク・・・?」と思う方もいるかもしれませんね? ただ、同種の電動バランスバイクはすでに多くの製造業者から販売されており、2輪車の乗り方を覚える乗り物という意味でのバランスバイクということで認識され、電動車のひとつのジャンルとしても確立されています。

エレクトロードは3〜8歳を対象に、自転車からモーターサイクルに乗り換えるまでの「ギャップ」を埋めるのに役立つ製品として生み出されました。そのカラーリングとグラフィックは、モトクロッサーのKXシリーズにインスパイアされたもので、子供のころからカワサキファンになってもらいたい・・・という思惑をうかがわせます。

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カワサキによる設計・製造ですが、モーターはあのメーカーの製品ですね!?

エレクトロードの特徴のひとつは、駆動用チェーン/ベルトが不要で生産コスト的にも優位なホイールインモーターを採用することです。またチェーン/ベルトがないことは、言うまでもなくチェーン/ベルトのメンテナンスが不要で、チェーン/ベルトが発する音がないゆえの静粛性の高さもそのメリットです。

もっともチェーン/ベルトがないことの、バランスバイクとしての最大のメリットは、転倒時などのときに子供がチェーン/ベルトに巻き込まれる怪我をするリスクを排除できることでしょう。多かれ少なかれ、乗り物を操縦することは危険がつきまとう行為ですが、なるべくリスクを軽減することは、子供向け製品では強く求められるべきことです。

エレクトロードに搭載される250Wのブラシレス・ホイールインモーターは、中国のEIWOL(无锡信安达电机科技有限公司)の製品です。なおEIWOLは多くの種類のハブモーター、およびホイールインモーターをラインアップするブランドです。

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エレクトロードはLow:5mph≒8km/h、Mid:7.5mph≒12km/h、High:13mph≒21km/hという3つの速度モードを選ぶことができますが、パスコードペアレンタルロック機能を与えることで、子供が勝手に速度モードを変えることを防ぎます。保護者が子供の技量を見極めて、安全管理できるように・・・という配慮から与えられた機能です。なおブレーキレバーのリーチは、子供の手のサイズに合わせアジャストすることが可能です。

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ライディングポジションは、オフロード車的なアップライトなもの。サドルとハンドルバーの位置はアジャスタブルで、身長37インチ≒94cmから55インチ≒140cmまで、子供の成長に合わせて簡単にポジションを変更することができます(最大許容体重は45kg)。

メインフレームはアルミ合金製で、36V 5.1Ah(187.2Wh)のリチウムイオンバッテリーを内蔵する構造。航続距離は条件によって変化しますが、カワサキは1充電で最大2.5時間(または約9マイル≒14.5km)を走ることが可能と説明しています。

バッテリーは樹脂カバーで保護され、前輪が跳ね上げる石などからバッテリーを保護。ステアリングヘッド付近に見える黒いパーツは、充電用のコネクター部です。なおエレクトロードには10分間操作がないときに電源をオフにする自動スリープ機能が採用されているので、うっかり電源をオフにしたときにも使用可能なバッテリー時間を長く保てるようになっています。

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気になる価格は・・・1,099ドル(約14万6,300円)です!

多くのバランスバイクは価格を抑えるためプラスチック製のホイールを採用したりしますが、エレクトロードは耐久性に優れる16インチ鋳造アルミ合金ホイールをおごっています。それに組み合わされるタイヤはノビータイプで、スタイリング的にもその魅力を高める効果を発揮しています。

ブレーキはリア側のみで、160mm径のメカニカルディスク式を採用。

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そのほかの装備で興味深いのは、折りたたんだ状態で固定できるフォールディング式フットペグを採用していることです。駆動輪のないバランスバイクのようにセルフプッシュで前に進めるときに使う機能ですが、自信を持ってモーターの力のみで走れるようになるまで、足を使ってエレクトロードに馴染んでください・・・という意図によるものです。

エレクトロードのカラーリングはライムグリーンの一色のみ。シート高は410〜520mmに調整可能で、フートペグを折りたたむことでセルフプッシュ式のバランスバイクのように扱うこともできます。

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エレクトロードのホイールベースは832mmで、そのコンパクトさから小回りが容易です。フロントフォークは28.8mm径のスチールチューブ製。多くのバランスバイクがそうであるように、エレクトロードも前後リジッドです。

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気になる価格ですが、アメリカの希望小売価格で1,099ドル≒14万6,300円です。キッズ向け電動モトクロッサーに比べればはるかに安い価格ですが、日本市場に導入されたらお子さんにコレを買い与えたいというお父さんも少なくないのでは? 期待しましょう!?

カワサキ エレクトロード 主要諸元
■モーター:空冷ブラシレス・インホイール パワーモード:3段階(ハイ/ミッド/ロー) 最高速度:13/7.5/5mph
■バッテリー:フレーム内蔵式リチウムイオン電池 電圧・容量 36V 5.1Ah(187.2Wh) 定格出力:250W 駆動時間:150分 充電時間:約2.5時間 最大充電サイクル:500回 充電電源:AC単相110V
■寸法・重量 全長x全幅x全高:1,235x582x767mm 最低地上高:139mm シート高:410〜520mm ホイールベース:832mm 乾燥重量:14.5kg キャスター/トレール:25度/75mm ハンドルクランプ:22.2mm ステアリングステム:28.6mm シートポスト:27.2mm ブレーキ:160mm径機械式ディスク(リア) タイヤサイズ:前後16x2.125
■価格:1,099ドル(約14万6,300円、米国市場希望小売価格)

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