アンディ・ウォーホルのポップアートの生産拠点”シルバー・ファクトリー”には、多くのセレブやファッションビジネスに関わる業界人が集まっていた。アンディは彼らをスーパースターと呼び、もてはやしたが、その中でも最も彼の寵愛を受け、輝きを放った一人の女性がいた。それがイーディ・セジウィック。
しかし、彼女の輝きは長くは続かなかった。ボブ・ディランに愛されたことがアンディの不興を買い、ファクトリーを放逐されると世間は手のひらを返したようにイーディを冷たくあしらうように・・・。
富豪の旧家育ちでありながら、ファッションとアートビジネスの中で名声とドラッグに溺れて病んでいった儚い美女、イーディ・セジウィックの28年の短い生涯を描いた切なすぎる伝記映画。

アートとミュージックの天才に愛された、哀しき美女の切なすぎる生涯

カリフォルニアでいくつもの牧場を営む名家に生まれたイーディは、ゲイであることを理由に家族から厭われた兄 ミンティの自殺のショックから精神を病み、病院生活をしていた。退院してからのイーディは画家を志し、ニューヨークに出るが、とあるパーティで当時の時代の寵児アンディ・ウォーホルと出会う。
類稀な美貌と、内なる脆さが不安定なオーラとなって顕れるイーディの魅力に、アンディはたちまち夢中になり、彼女を自分の映画のヒロインに仕立て上げる。彼女は毎夜ファクトリーで繰り広げられるパーティーで、酒やドラッグの虜になっていく。
やがて、アンディの取り巻きが集まる彼のスタジオ”シルバー・ファクトリー”のミューズとして、社交界にデビューするやいなやイーディは誰も知らぬものがないほどの人気者となるのだ。

しかし、その人気がアダとなる。彼女は音楽の世界のスーパースター、ボブ・ディラン(映画ではビリー・クィン)に見初められ、恋仲になるが、それが原因でアンディの寵愛を失い、路頭に迷う。

イーディーは傷心のまま故郷に戻り、薬物中毒患者として入院する。その後、同じ病院の患者と結婚するも、28歳の若さでオーバードープ(薬物過剰摂取)のため、此の世を去る・・・。

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アートとビジネスの天才に愛され、理解されなかった彼女の不幸とは

確かにアンディ・ウォーホルはイーディを愛していたのだろう。しかし、彼はゲイだったから、イーディの美しさを愛し、恐ろしいほど不安定で崩れやすく、脆い彼女の精神性を、儚く代え難い美しいモノとしてリスペクトした。
しかし、アンディはゲイであるとともに異常なまでの倹約家で、薬物依存もあいまって浪費が止まらないイーディを、最後まで理解できず、したがって守ることができなかった。彼女が本当に必要とした物理的なサポート(セックスと金)を与えることができず、結果としてイーディの脆い精神と生活が破綻していくことを傍観した。

映画の中では、アンディも最低の俗物だし、結果的に彼女を見捨てたビリー・クイン(≒ボブ・ディラン)も身勝手なクソ野郎だ。しかし、イーディの破滅も、彼女自身が選んだ選択肢の結果である。

彼女は不幸であった、作中でイーディはそう自省する。
しかし、確かに彼女は一斉を風靡した。その輝きは嘘ではなく、ファクトリーを飾る銀色の装飾に勝る光を放っていた。彼女のポートレートを今見ても、思わず心奪われる美しさがそこにある。

美しさとは、刹那的であるからこそ、一瞬の輝きであるからこそ、価値がある。その通りなのだが、その瞬間を切り取り、記憶に留められるテクノロジーが彼女を永遠にする。

クレオパトラしかり、トロイ戦争のヘレネーしかり。悲劇と美女は伝説になって後世の我々を魅了するのである。

Factory Girl Trailer

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