年末の恒例企画、Lawrenceが独断と偏見? で選んだ、2025年の2輪業界にまつわる10大ニュース(順不同)。ベトナムでは2026年7月より、首都ハノイの環状道路1号線でのICE搭載2輪の運行を禁止することを決めています。この政策は基本的に環境対策ではありますが、自国のEV産業振興の意図もあるように思えます。

大胆な、首都圏ICE搭載2輪車運行禁止策を打ち出したベトナム政府

ASEAN圏内で高い成長率を維持しているベトナムですが、2025年7月12日にベトナム首相のファム ミン チンは「20/CT-TTg」という環境保護と大気質改善に関する政令を発布しました。その内容は、首都ハノイの環状道路1号線におけるICE搭載2輪車の走行を禁止する、というものです。

さらに2028年1月1日には、ICE搭載2&4輪の環状1号線および環状2号線内の利用制限実施を予定。そして2030年までに、制限区域を環状3号線まで拡大する方針を打ち出しています。ハノイ市人民評議会の議長はメディアに対し、メーカーと協力して低排出ゾーンでのICE搭載2輪車削減プログラムを実施し、2輪EVの購入支援策などを打ち出すプランを明かしています。

2030年まで続くこの計画の成否は、政府の思惑にどれだけハノイ市内および近郊の2輪ユーザーが、理解を示すかにかかっているのでしょう。

長年ベトナムでは、ホンダのスーパーカブが庶民の足として活躍してきました。現在ハノイ市内で運行されている2輪車の台数は、約690万台ほどといわれています。また市外から来て定期的に市内で走行している2輪車は約150万台で、これらの最大70%は環境性能の低い古い車両であると、ハノイ建設局は公表しています。

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環境保護と自国産業振興の一石二鳥?

環境性能の低い、古いICE搭載2輪車を首都圏から追放することで大気汚染を排除することができる・・・という考え方には、もちろん一理あります。ただどうも、政府の狙いはそこだけというわけではなく、自国のEVメーカーであるビンファストの売り上げをアシストすることも考えているように思います。

画像: ビンファストの若者向け電動スクーター「エボ ライト ネオ」。最高速度は49km/hで、航続距離は78km。トランク容量は17リットルというのが主なスペックです。バッテリーおよび充電器込みで価格は1,440万ベトナムドン≒8万5,720円(付加価値税含む)と、かなり安価な設定となっています。 shop.vinfastauto.com

ビンファストの若者向け電動スクーター「エボ ライト ネオ」。最高速度は49km/hで、航続距離は78km。トランク容量は17リットルというのが主なスペックです。バッテリーおよび充電器込みで価格は1,440万ベトナムドン≒8万5,720円(付加価値税含む)と、かなり安価な設定となっています。

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現在ベトナム2輪市場では、ホンダとヤマハの日本勢がシェア1位2位に立っていますが、2017年創業でEV専業のビンファストは3位につけており、2輪EVに関してはトップの地位にいます。なおビンファストの4輪EVは2024年にベトナム新車販売台数でトヨタを抜き、初の首位になったことが経済メディアを中心に話題となりました。

12月29日、日経新聞の報道によると2025年、新車世界販売台数で20年以上首位だった日本車を抜き、中国車が初の首位になることが報じられました。中国車といえばEV、というくらいEVのイメージが強いですが、その販売戦略はEV一本槍ではなく、むしろ柔軟といえるでしょう。輸出市場では中国製EVに高関税を課す国・地域が多いため、中国勢は国内向けにEVを普及させる一方、EU市場は関税率がEVより低いPHEVを販売したり、関税回避で現地組み立てや生産を進めるなどの策を講じています。

ベトナムのビンファストも更なる成長のために輸出市場へのEV進出を企てていますが、中国同様に自国市場では自国産業が力を入れているEVを普及させ富を蓄えるという、地の利を活かす戦略を政府と二人三脚で進めていくと思われます。

自動車業界のゲームチェンジャーになるか注目されているEVですが、日本を除くアジアの国では今のところ、国内でEVを普及させることを国策的に進めることがトレンドで、今後もこの流れは続くことになるかもしれません。

この状況を、自動車文明勃興期からのリーダー格だった欧米、そしてそれを追った日本と、EVに活路を見出すアジアの振興勢による「文明の衝突」と面白おかしく見ることもできます。しかし今後のエネルギー事情、環境意識の高まり、国際紛争、サプライチェーン問題などなどで変わる話でもありますから、あまり固定的・単一的に捉えない方が良いかと思います。2026年度は、どのような動きがあるのか、アジア情勢から目を離せないですね。

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