動力用バッテリーのサイズ的問題から、航続距離がICE(内燃機関)車より短い・・・というのは現状の電動バイクの悩みどころです。じゃあ動力用バッテリーを大容量にしちゃえば良い!! ということで企画されたザイザーという電動バイクを紹介します。それにしてもコレ、戦前の"あのバイク"を思い出させますね・・・? え!? "あのバイク"がわかるのは、変態限定ですか・・・?

17.3kWhの大容量バッテリー!

シンプルさを旨とするバイクにとって、電動化に際しサイズと重量がかさむバッテリーの仕様をどうするかは頭の痛い問題です。現状EV動力用バッテリーの主流であるリチウムイオン電池ですが、4輪に比べるとサイズが小さい2輪の車体に、どれだけのサイズの物を積むのか・・・。さらに電池自体が高価なことも、一般論として4輪より安価な2輪では考慮せざるを得ないことではあります。

EVは家で充電できるのが特徴ですが、ICE車に燃料を供給するガソリンスタンドほどは充電可能な場所が整備されていないので、出先での充電をどうするか? というの不安が、2輪EV普及を阻む要素のひとつになっています。

2輪EVの航続距離を伸ばすことは「出先の充電」への不安を和らげる効果がありますが、そのためには大きくて重くて高価な大容量動力用バッテリーを搭載しないといけない・・・。現状、これはすべての2輪EV開発者が抱えるジレンマです。

2021年暮れから2022年に、2万5,000ドル≒273万8,325円で販売予定というザイザーの電動バイクは、17.3kWhの大容量バッテリーを搭載し、300マイル≒482km! という長い航続距離が可能ということをアピールしています。

ザイザーは前後輪にハブモーターを使い、2輪駆動でトラクションコントロールを制御。さらにオート・スタビリティ機能を搭載することで、渋滞や高速走行時でも安定をサポート、と謳っています。モーターを車体側に搭載しなければ積載スペースの余裕が生まれるので、そこに大容量バッテリーが積めるようになる、ということなのでしょう。公表値のスペックは航続距離のほか、最高速が120mph≒193.1km/h、急速充電対応、0〜60mph≒0〜96.56km/h加速3.6秒となっています。

電動バイクの航続距離は、パワーやエコなどの走行モード、外気温、ライダーの乗り方などで大きく変化するものですが、本当にザイザーは482kmも走り続けることができるのでしょうか? すでに市販されているライブワイヤーは15.5kWhのバッテリーで航続距離は公称152〜235km。そしてMotoE用エゴ・コルサを供給するエネルジカは、ザイザーより大容量の21.5 kWhバッテリーを採用していますが、公道用エゴシリーズの市街地航続距離は公称400kmになっています。

また、ザイザーのバッテリーは車体から取り外して充電することも可能、とのことですが、4kWhほどのバッテリーでも20kgくらいの重さがあることを考えると、17.3kWhの大きく重いバッテリーを車体から取り外すには、専用ジャッキなどを用意する必要があるように思えます・・・。

あなたはボーマーランドをご存知ですか?

・・・といろいろ疑問を書き連ねてしまいましたが(失礼)、ザイザーが独自の優れたバッテリー管理、回生機能、そしてモーター制御の技術を持っていれば、必ずしも航続距離482kmが不可能というわけでもないかもしれません? 開発が進んで、その続報を期待して待ちましょう!

ところでクルーザー、と定義されるザイザーのスタイリングを見て、誰もがそのホイールベースの長さに驚かされるのではないでしょうか? その数値は明らかではないですが、旧いバイクのエンスージャストの方はこの長さっぷりを見て「ボーマーランド」を思い出すのではないでしょうか?

2018年にボナムズオークションに出品された、1937年型ボーマーランド 603cc ラントゥーレン。なお落札価格は6万3,250英ポンド≒978万円でした! ちなみにラントゥーレンとは、ロングツーリングの意味です。

www.bonhams.com

1925年から1939 年にかけてチェコスロバキア(当時)で生産されたボーマーランドは、さまざまなホイールベースのモデルが作られましたが、最も有名なボーマーランドであるラントゥーレンは4シーターで、最もホイールベースが長い(約3,200mm)2輪でもあります。

ラントゥーレンはそもそも軍用に実験的に開発されたモデルで、兵士4名を運べるようにデザインされています。なんとギアボックスは手動変速式のものが2つ搭載されており、前側はライダーが、後側はパッセンジャーが操作することで、9速のギアレシオを選ぶことが可能でした。

画像: ドイツのNSUネッカースウルム博物館所蔵のボーマーランド。こちらは3人乗りのトゥーレンです。そのほか2人乗りのスポーツも用意されていました。 commons.wikimedia.org

ドイツのNSUネッカースウルム博物館所蔵のボーマーランド。こちらは3人乗りのトゥーレンです。そのほか2人乗りのスポーツも用意されていました。

commons.wikimedia.org

ボーマーランドのラントゥーレンのホイールベースの間に、バッテリーを目一杯積み込んだら・・・きっとかなりの長距離を1回のフル充電で走れる2輪EVを作れるのではないでしょうか? ICE車にはない魅力を盛り込む・・・ということは、2輪EVの大事な開発テーマだと思いますが、ボーマーランドのように3〜4人乗りの2輪EVとか生まれたら、かなり面白いと思いませんか?(私だけ?)。

画像: Böhmerland-Treffen / Sraz Cechie Krasna Lipa 2018 youtu.be

Böhmerland-Treffen / Sraz Cechie Krasna Lipa 2018

youtu.be
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