以前のようにヘビロテではないですが、たまーにまた記事を書かせていただけることになりました〜。よろしくお願い申し上げます。
これまた超お久の企画は、名作一気のレビューでございます。本日ご紹介するのは、2006年~2010年にビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載された、永福一成先生 原作、松本大洋先生作画の超本格的時代劇コミック『竹光侍』であります。
本人も知らない“大人の事情”で命を狙われる浪人の話
主人公の瀬能宗一郎は、信濃から江戸にやってきた、とある長屋に住む、狐目の浪人です。少々茫洋としており、串団子などの甘いものが大好きで、長屋の子供達によく好かれています。剣の達人ながらなぜか愛刀を売り払って竹光を腰に差しております。(剣を持っていると、使いたくなる、血腥い世界からは離れたいと願っているのです)
実は彼は信濃のとある藩主のご落胤(つまりお妾さんとの庶子)なんですが、ご本人はその事実を知りません。ただ、その殿様がご病気でいつ死んでもおかしくないという状況になって、彼を後継にしようと画策する者が現れる。つまり、いわゆるお家騒動に巻き込まれてしまうんですね。
宗一郎本人はそんな事情は全く預かり知らないのですが、 他の候補を擁立する反対派が、彼を亡き者にするために刺客を送り込み、江戸の町に騒動を起こしてしまうのです。
その剣の腕前からは想像もつかないくらい穏やかで人の良い宗一郎は、長屋の住人たちとの和やかな生活に馴染んでいきますが、周囲の事情が彼のそんな平和な毎日を壊しにかかるのです。果たして宗一郎の命の行方は?彼に安逸な日々は訪れるのでしょうか??
その勢いに思い切り呑まれちゃいたい作品
この作品、松本大洋先生の独特なコマ割りに慣れるかなれないかで、ハマるハマらないが決まるかと思います。特に、話の前半は、比較的ゆっくりとストーリーが進むので、そこで脱落してしまう人も多かろうと思ったり。ただ、本作は、原作(小説)があって、起承転結がはっきりした作品なので、淡々と進むように見える前半から、満を持してどぉ〜っとばかりに怒涛の勢いで話が進む後半までが、ある意味包括的に計算されているわけですよ。さまざまな謎や伏線が一気に後半に紐解かれていくそのカタルシスを味わいながら、楽しむと、ホントに面白い作品なのです。
絵も上手いのか粗いのかよくわからないタッチなので(いや、ホントはすごい上手いんですが)その勢いに呑まれることができれば、マジ幸せ、アクションもキレの良い、技巧を楽しむというよりは、そのパワーに巻き込まれちゃうべきな描写です。
宗一郎と触れ合うその他登場人物も味わい深いし、彼を狙う刺客のキャラ立ちもきっちりしている(応援したくなりはしない、ちゃんと悪役でいてくれます)。ちゃんと時代劇してるんですよ、ほんとに。
トーマスはね、マジハマりました。ぐわーって迫ってきて、のあーって巻き込まれて。よくできたストーリーだと思うし、誰か他の漫画家が手掛けてもちゃんと成立する話だと思うんですが、それでも永福先生の巧みな筋書きが、松本大洋先生のパワーと相まって、すごい作品になっている、ぼくはそー思いますです。はい。オススメです。