量産ディーゼルバイクはかなりレアな存在・・・
そもそもディーゼルエンジンは、1893年にドイツのルドルフ・ディーゼルが特許を取得した、レシプロエンジンの一種です。点火方法が圧縮着火のため基本的に点火装置が必要なく、圧縮着火のために高い圧縮比で設計されるのが特徴です。
一般論としてディーゼルエンジンは大型・低速の方が有利とされ、小型・高速が求められるバイク用エンジンには不向きです。そのことは、1世紀余の2輪車の歴史のなかでディーゼルエンジンを採用した量産バイクの少なさが証明しています。
ミリヲタ諸氏には常識でしょうが・・・実は100%カワサキ製、ではありません
さて、カワサキをベースにした軍用ディーゼル車・・・ですけど、これは英国のクランフィールド大学が研究開発し、米国のHDT=ヘイズ・ダイバーシファイド・テクノロジーズ社が製造した"HDT M1030M1 JP8 / ディーゼル"のことです。
車体を含め基本構成は1990年代のカワサキ製デュアルパーパスモデルであるKLR650を用いていますが、HDT M1030M1 JP8はディーゼルエンジンを搭載しているのが特徴で440台が米海兵隊に購入されたと言われています。JP8というのはジェット燃料のことですが、M1030M1 JP8はJP8以外のジェット燃料、灯油、ディーゼル燃料でも走れるのが大きな利点です。
保管・管理がガソリンより容易なディーゼル燃料で走れ、さら航空機燃料も使うことができるという点は、戦場における兵站に優位なのは明らかです。その点でHDT M1030M1 JP8は世界中に戦線を展開することを想定したアメリカ軍にぴったりなディーゼルバイクと言えますが、米軍のみならずM1030M1E AVTUR / ディーゼルミリタリーという兄弟車が、英軍/NATO軍にも購入されていたそうです。
なお、民間向けバージョンの"D650A1ブルドッグ"も2006年発売で企画されはしたのですが、残念ながら? この計画は中止されることになりました。ただし、軍用のM1030M1ディーゼル系モデルは払い下げされてもいるので、海外の中古市場に出てくることもあり入手することが可能です。
ディーゼルエンジン搭載のKLRといえるHDT M1030M1 JP8欲しい好事家は、こまめに海外のネットオークションをチェックするといいでしょう(日本の法規で公道走行用に登録できるのかどうかは、自己責任? でお調べください)。こちらはそんな個体の一例をおさめた動画です。ディーゼルエンジンならでは? のアイドリング音を、ぜひ動画でご確認ください。