年間100本以上の映画作品を鑑賞する筆者の独自の映画評。今回は、シャーリーズ・セロンやマシュー・マコノヒーらが声優を務めたことでも話題のストップモーションアニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。奈良平安あたりと思われる時代の日本を舞台に、魔界の者と対峙する三味線使いの少年クボの戦いを描く。

闇の魔族に追われる少年の運命とは

心を病んだ母親と2人で、人里を避けた洞窟の中で暮らす少年クボ。三味線を巧みに弾きこなすことで折り紙に命を与え、自在に操れる不思議な力を持つ。

時折正気を取り戻す母親は、彼に日が暮れてからの外出を固く禁じるが、それは彼女の父親でありクボの祖父である魔界の者 月の帝と娘たち(クボにとっては叔母であり、クボの母親の妹たち)が、母子を執拗に探しているからであった。彼らはクボの父親であるサムライ ハンゾウを殺害し、クボの片目を奪った。
クボと母親は命からがら逃げおおせたが、彼らの追跡を怖れて、身を隠し続けているのだった。

しかし、ある祭りの夜、クボは母親の言いつけに背き、日が落ちても人里にいた。そのちょっとした不注意を月の帝は見逃さず、クボは禍々しい姿の叔母たちに見つかってしまう。

間一髪のところで叔母たちを振り切ったクボだったが、クボを逃す代わりに彼の母親が命を落としてしまう。
果たしてクボは月の帝たちの魔の手から逃れることはできるのか。そして、父と母の仇となった彼らに復讐することはできるのか。

雨月物語を彷彿させるようなダークやトーンの中で展開していく、叙情的なアニメファンタジー。

陰湿な恐怖感をもって迫る危機に共鳴

ストーリーや全体の設定などはそれほど緻密ではない。例えばピクサーアニメのような精細な物語を期待してはいけない。あくまで全体のトーンとしては、おとぎ話であり、雰囲気重視の作品である。

だが、クボを追う魔界の者が湛える禍々しさには、ヒタヒタと肌を慄然させるような暗さと陰湿さがあって、見る者に恐怖を与えるに十分。全体の矛盾は気にならず、古典的な怪談に聞き入っているような感覚を味わうことができる。

舞台が日本であるということもあるのだろうが、あくまで西洋的な邪悪で高圧的な闇ではなく、東洋の湿度の高いジワジワ迫ってくる闇を、本作はかなり巧みに表現している。

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