バイクを主題としたフレンチアクション。
主人公の普段の足もドゥカティ、麻薬運搬用に使われるバイクもドゥカティ。
主人公のトニーは26歳のレーシングライダー。将来MotoGPに進出しようと目論むあるレーシングチームの所属ライダー候補に選ばれ、ようやく未来が開けはじめた気分だったが、別れた恋人が麻薬組織を相手に作った借金の返済のため、バイクを使った麻薬の運び屋をやらされる羽目になる。
昼間はアルバイトと、テストライディング。夜は高速道路を常軌を逸したスピードで走り回り、麻薬を運ぶ。あまりのハードワークと、毎夜警察や敵対するギャングに追われるストレスフルな日々に、トニーは疲労の色を濃くしていく。
借金返済期間(2ヶ月)だけとの約束ではじめたものの、果たして自分の体が持つものか、そして麻薬組織が自分を解放してくれるものかわからない。疲労のためにテストライディングにも支障をきたし、トニーはこのままでは自滅するだけであることを理解し始めるが・・・。
フランス語で展開される、ハードなバイクアクション映画。
フランス映画らしい若さの残照
主人公トニーと、元カノの間には子供がいて、トニーとしては恋人は自分の息子の母親でもある。
ハリウッド映画であれば、若くして別れた妻と子供、という関係性になるだろうが、そのあたりの設定が実にフランス映画らしい。
トニーは26歳で、一般的に言えばまだまだ若者で将来を嘱望されるべき時期にあるが、レーサーとしては(キャリアのピークが数年しか続かないことを考えれば)すでにそれほどの時間は残されていない。実際に、彼の技量に目をつけたレーシングチームの監督はトニーに期待しつつも、他の若い(ほとんどが10代であろうと思われる)ライダーたちと比べれば、さほど変わらないタイムでしかないなら若い方を取る、と明言する。レースを含む全てのアスリートたちが生きる世界はヤングメンズワールドなのだ。
そんな当落線上ギリギリにいる自分の境遇をわかりすぎるほどわかっていながら、トニーはそのレースの世界に集中させてもらえず、犯罪の片棒を担がざるを得ない。前述したように、元恋人の借金を肩代わりしたからだ。
この理由についても、米国映画ならどちらかというと息子のため、もしくは息子の母親のため、というニュアンスで描かれることが多いと思うが、本作ではむしろ愛する人のため、離れてしまった恋人の心をもう一度引き寄せるため、という感じが強い。
結果として、レーシングライダーとしての成功を夢見ながらも残り時間が少なくなって焦りを感じている若者の、残り少ない若さを燃やす(もしくは燃やし尽くす=バーン・アウト)という側面を強く表現した作品であると言える。