人口増大や食料問題など、さまざまな破滅への予兆に慄く人類が得た、新しい光明は、自らのダウンサイジングだった。
止まらない人口増。それにつれて明らかになっていく食料や資源の枯渇問題・・・。このままでは人類は絶滅への道を歩むしかない?
そんなとき、ノルウェーのある科学者が人間を1/14(≒7%)に縮小する技術を発見。車のダウンサイジングはよく知られるが、人間そのものをダウンサイジングすれば、全ての資源を温存できる!
しかもダウンサイズされた世界に、ダウンサイズ前の資産を持ち込めば、逆に何十倍もの価値となるから、一瞬で大金持ちになって何不自由ない生活を送ることができるのだ。
この技術が確立されて10年。人類のダウンサイジングプロジェクトはさまざまな偏見や心理的抵抗に遭いながらも全人類の3%にまで普及してきた。
世界中に点在するダウンサイズ後のミニチュア人間たちのコロニーは、完璧にコントロールされた快適な空間で、住む者たちはみな平和で穏やかな生活を送っていた。ネブラスカ州オマハに住む主人公のポールは、ダウンサイズに興味を持ちながらも踏み切れずにいたが、高校の同窓会でかつての親友がミニチュア化したことを知り、妻とともにダウンサイズする決意を固める。収入も低く、自分たちの未来に希望を持てない現実を一気に変えるチャンスと考えたのだ。
全ての資産を現金に変え、ダウンサイズ施術を受けることに決めたポールだったが、ミニチュア化された人生は、彼の予想をはるかに裏切る波乱万丈なものだった・・・。
名優を揃えた佳作
主人公のポールを演じるのはマット・デイモン。CGなのか肉体改造(改悪?)したのか、中年太りした風采の上がらない田舎者をそつなく演じている。
ポールの隣人でパーティー好きの大金持ちに、名優クリストフ・ヴァルツ。こちらも 金と暇を持て余して気ままに生きる悩みなき男を、普段以上に飄々とした軽さをもって演じきっている。
日本では劇場公開されてもあまり話題にならなかったが、割と重いテーマでありながらふわっとしたムードで押し切るSFコメディ。大笑いすることはないが、なんとなくほのぼのとうっすら笑える佳作だ。
人間をダウンサイジングする技術はおよそ実現不可能、というより研究さえされてないだろうと思う技術だが、直面する解決すべき問題そのものはリアル。ダウンサイズがないなら、どういうソリューションを考えるべきか、ちょっと思いを寄せてみたら?と、いうのが本作のメッセージかもしれない。