今回は、そんなSRを愛する男に現れた恋の機会の話。
オートバイ2018年11月号別冊付録(第84巻第17号)「Late Summer」(東本昌平先生作)より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@ロレンス編集部
夏も終わり、秋めいた風の中、SRにまたがった私は温泉地に向かった
その日私は、紅葉が始まった温泉地に向けて愛車のSRを走らせた。
猛暑が続いた2018年の夏がようやく去り、暑くもなく寒くもない、バイクには最高の季節。私もSRもご機嫌だった。
特に目的地を決めたわけでもない、旅ともツーリングとも言える、気楽な走りを楽しんだ私は、観光地に集まる家族づれやカップルの中で、1人の気儘さを享受しながら、ぼんやりと美しい風景を眺めていた。
そのとき、彼女は言った。「SRって、バイクってかんじよね」
そのとき、私は後ろから声をかけられて振りかえった。
ぼうっと風景を楽しんでいると、後ろから「いいわねバイク!」と女性の声が・・
「ツーリングですか!?」
振り返ってみると、ボルドーカラーのジャケットを羽織ったショートカットの女性が微笑みながら、私のSRの横に立っていた。
ねえ・・・とその女性は私のSRを見ながら「このバイクかわいいよねぇ!」と言った。
「乗るんですか?」と私が訊くと、彼女はSRから目を離さないまま「いえ、これから免許取ろうと思って」と言う。
女性ライダーが増えるのは良いことだ。しかも(表情には努めて出さないように気をつけていたが)目の前の女性は、なかなかに私の好みだったのだ。
車で温泉めぐりに来たという彼女だったが、やがて意を決したような顔で言った。
「後ろに乗せてもらえません?」
チャンス・・・ではあった。しかし。
しかし、私は1人でここまできている。当然予備のヘルメットは持っていなかった。
さて、SRによって、降って湧いたような好みの女性との邂逅が!
あなたならこのチャンス、どうする??
さて、私は本当はどう答えたか、そしてそのあと彼女との関係は深まったのか、そのままお別れだったのか、夏の終わりの恋はどうなるのか、気になる方はぜひ、本誌で確認してくださいな笑。
大人のバイク乗り、SR乗りのファンタジー、ぜひ楽しんでください。