“今”のもうひとつ先にあるものを
国内メーカー入り乱れで白熱する250ccフルカウルスポーツ事情ですが、フルモデルチェンジによって、ますます人気を磐石にした感のあるNinja250に改めて乗るチャンスがありました。
どうしてNinja250って、こんなに人気があるんでしょうね?
それに対して今回、思うことがありました。
すこし大げさですけど、その理由は「Ninja250」というバイクの存在意義そのものにも関わっているかもしれません。
初代は「チャレンジ」だったと思う
乗って、思い出したのが2008年に登場した初代のNinja250Rのこと。
ざっと10年前のことですけど当時、壊滅的に不人気だった250ccクラスに突然投入されたNinja250Rは瞬く間に爆発的ヒットモデルになりました。
これを予想していたのならカワサキの先見の明には恐ろしいものがありますね。
その後はご存知のとおり国内メーカーが一斉に「Ninjaを追い越せ!」と追随したんです。
ところが2012年に
そんな中でカワサキは大ヒットモデルを『Ninja250』へとフルモデルチェンジ。このときも震撼でした。
本格派の大排気量スポーツに見劣りしないスタイルへ生まれ変わったんです。
ギアを1速上げた感じ。これで後続はまたもや引き離されます。ライバルは度肝を抜かれ、歯がゆい思いをしたことでしょうね。
Ninja250は、常に一歩先を行くオピニオンリーダーだったんです。
じゃあ最新のNinja250は?
しかし、他の国内メーカーも黙っていません。万全の体制でNinja250を撃墜する体制を整えていました。
そうした中で生まれた新型Ninja250ですが、最初はすこし弱く感じたんです。ヘッドライト周りのデザイン変更がメインなだけか? って。
こちらはエンジンの新旧Ninja250のパワーカーブです。
最高出力は37馬力へと上がりました。これもスゴいとは思いますけど、初代と2代目が登場した時ほどのインパクトはありませんでした。
だって同じ車体で重量もたった1kg差なのに、最高出力48馬力のNinja400が同時発売されましたからね。
今回は400が本命か? って誰もが思ったはずです。
公道でこそ発揮される真価
でもやっぱり先代モデルとは大きく違う。その真価はむしろ公道走行でこそ発揮されるものでした。
エンジンは先のパワーカーブをご覧になれば分かるように、高回転域でのパワーアップが顕著です。回転数でいうと1万回転以上。そこから本領!といったような力強い伸びを見せます。
でも、それより顕著に違いを感じたのはドライバビリティです。
最大の違いはやっぱりフレームだと思います。兄弟車のNinja400と同じフレーム。
つまり、設計上400の最高出力や高負荷に耐えられるシャシーが、250には与えられているっていうことですよね。
走りにこだわるライダーの皆さんはご存知かもしれませんが、こういう「車体が完全にエンジンに勝っている」バイクって、独特のフィーリングがあるものだとボクは思っています。
しかもフロントフォークのインナーチューブ径がΦ41mmへ大径化され、ブレーキローターもΦ310mmと拡大。
リヤサスペンションもフレームに合わせて最適化され、バランスが整えられています。
狙ったラインを狙ったとおりに
その車体が生み出すものは「ゆとり」です。
決してヌルい意味じゃありません。例えばコーナーに飛び込んでいく、ブレーキをリリースして車体を曲げる瞬間。そこで焦らない。
頼れるブレーキとしっかり感のあるシャシーは、もう一度、狙った走行ラインを再確認する余裕すら与えてくれます。
しかも、狙ったラインに車体を運ぶための微調整がしやすい。
あとすこし寝かせよう。もうちょっと車体を起こそう。
バイクを一気に寝かせていくのは、ほんの1秒とか瞬間のはずなのに、それを調整する余裕があるんです。
度胸一発の飛び込みじゃない。あくまでバイクを人が操っている感覚が強い!
いわゆる、一体感というものだと思います。
先代モデルよりも絞り込まれたハンドルと、車体をホールドしやすいようにスリムに絞り込まれたタンクのニーグリップ部分。
そして、シートの変更も良い方向に作用していると感じました。
シート高は795mmで先代モデルと数値は同じ。だけど40mm肉厚になり、低反発ウレタンも採用されています。
このウレタンが良い仕事してくれます。バンク中のホールド感が強い。ライダーをきちんと支えてくれるんです。
乗車姿勢そのものは、先代よりすこし前傾姿勢が強くなったように感じますけど、あくまでわずかの差。
でもおそらく、この差も走っている時の一体感に影響しているのだろうと感じています。
乗車姿勢がハンドリングを大きく変える。最近、ボクは別件でそれを痛感したばかりです。
ちなみにシートは前方が30mm絞り込まれたことによって、先代モデルよりも足着きが良くなっています。
身長160cmくらいあれば、女性でも不安なく扱えると思いました。
一体感と操る楽しさを、バイクがフォローする
強いフレームと頼れる足周りに加えての、人車一体感。これがあれば、走りに自信が持てるのはどんなライダーでも同じことです。
そして、そこからは新しいエンジンの独壇場でした。
コーナーを立ち上がって、次のコーナーへ目指してスロットルを開放。最高出力37馬力のパワーアップはサウンドでも堪能できます。高回転域のサウンドは、耳からもバイクで走る歓びを満喫させてくれるんです。
五感をフルに刺激する。これもカワサキ車らしさ、ですね。
そして何より、コーナーとコーナーの“つながり”が最高です。
レッドゾーンが肉薄するコーナー手前。そこでシフトアップするか、そのまま引っ張るか。その判断の瞬間にNinja250は「そのまま引っ張れ!」と言ってきます。
エンジンから感じる余裕が、そうすればいいと信じさせてくれるんです。
走らせ方に迷わない。Ninja250は、いつも正しい判断を下すゆとりをライダーにくれます。
カワサキが目指したものは?
ここにきて思います。最近はハイパフォーマンス合戦みたいな様相になっている250ccフルカウルスポーツですが、そんな中でカワサキのNinja250は、他とは違う着地点を目指したのかもしれません。
そう思ったのが、これでした。
『強さと優しさの共存させる』
『操ることを悦びにする』
『あらゆる可能性に挑戦する』
カワサキのものづくりに対するポリシーといったところでしょうか。
強さはそのデザインに、優しさはハンドリングの中にありました。
そして、Ninja250は操る悦びの塊でした。
そして、可能性。Ninja250は250ccフルカウルスポーツの先導者として、先鋭化しようとする流れに一石を投じようとしているのかもしれません。
だって初代Ninja250Rがそうだったじゃないですか?
速さじゃない、走ることを楽しむのがいちばん大切なことだ、って。
カワサキらしさって何でしょう?
ところでライダーにとってのカワサキっていうと、世界最速!みたいなフレーズがイメージされやすいですよね。ボクもそれは同じです。
歴史を紐解けばZ1(900 SUPER 4)など、チャレンジの軌跡が伝説として残っていますから。
でも考えてみると、本当に注目すべきは最高速の数値より“チャレンジする精神そのもの”じゃないかと思うんです。
そう言うのには理由があります。
国産初の潜水艇はカワサキでした。ヘリコプターもそうですね。
世界最初の新幹線にもカワサキは関わっています。これは「世界初の高速鉄道」でした。
テレビでも話題になりましたけど、1991年にフランス/パリとイギリス/ロンドンを結ぶユーロトンネルを開通させたのもカワサキの掘削機です。
この時に開発された「鉄のモグラ」とよばれるTBMも、結果的に世界記録を叩き出しています。
カワサキを好きな理由
ちょっとNinja250から話が離れてしまいました。
何が言いたいかというと、ボクたちライダーはどうしてカワサキ車を好きになるのか? ということなんです。
その理由は単純に最高速やスピードじゃない。ワクワクさせてくれること、そのものに惹かれているのではないでしょうか?
だとしたら、チャレンジを続けるNinja250って、カワサキスピリッツそのものだと感じるんです。
そのポリシーが根付いているからこそ、このバイクは不動の人気が揺るがないのかもしれません。
バイクとしてスタイルも性能も良い。でもそれとは別に、惹かれるものがある。
カワサキが好き。
みなさんがそうなった理由。それは、どこにありますか?
最前線のカワサキスピリットが満載!
世界に冠たる大重工業の最新キャッチコピーが『カワる、サキへ』でございます。
こういうセンスも大好きですよ!(笑)