戦後の速度記録車の主流となった「グループC」
第二次世界大戦前の速度記録挑戦は、もっぱら我々に馴染み深い内燃機関を搭載した車両で行われました。そして戦後にジェットエンジンやロケットエンジンを搭載する車を対象にしたグループCが創設されると、一気に記録争いの主流はターボジェット搭載車に代わることになります。
初めて1,000km/hの壁を突破したのは、1970年の1001.667km/hという記録でした。この時に使用された「ブルーフレーム」の動力は、ターボジェットではなく、なんとロケット! でした。
戦後からこの「ブルーフレーム」の記録まで、この分野で主に活躍したのはアメリカのチームでしたが、これ以降の記録は英国チームが樹立していくことになります。まず1983年にターボジェットを搭載する「スラスト2」が1019.47km/hをマーク。さらに推力を増加させるためターボファンを2つ!! 搭載した「スラストSSC」が、1997年に1,227.985km/hまで記録を伸ばすことになります。
ジェットエンジン、ロケット、そしてジャガーFタイプRと、3つの動力を搭載!
なお「スラストSSC」のSSCとはスーパーソニックカー(超音速車)を意味します。標準大気中の音速1225km/h=マッハ1を超えてこそ超音速車、と定義するなら見事スラストSSCは初のSSCになったわけです。
そして久々に、このトラストSSCの記録を抜くために計画されたのが、「ブラッドハウンドSSC」です。
13.4メートル・7.5トンの、カーレーシングと航空工学を組み合わせて作られた車体には3つの動力が搭載されています。ひとつはロールス-ロイス製のユーロジェットEJ200というターボファンのジェットエンジン。そしてノルウェーの軍産企業ナンモのロケットエンジンを組み合わせ、推力を稼ぐハイブリッド方式のSSCになっています。なんと、ふたつの動力の合計は135,000馬力以上! ・・・になるそうです。
そしてもうひとつは・・・ジャガーのFタイプRクーペ用のV8・5リッターのレシプロエンジンです。ジェットとロケットの2つのエンジンを積んでいるなら、550馬力のクルマ用エンジンなんて不要じゃないの・・・と思うのですが、このV8エンジンはロケットに燃料を送るポンプの動力として搭載されているのです。
2008年にプロジェクトが公表されたブラッドハウンドSSCですが、挑戦実行までにはまだ至っていません・・・。
しかしプロジェクトは着実に進んでいるようであり、昨年秋には英国のコーンウォール空港でブラッドハウンドSSCは初の公開走行を披露しました。このときはもちろん、アルミ合金の「デザートホイール」ではなく舗装路移動用のゴムタイヤ付き「ランウェイホイール」を装着しています。
今年はいよいよ記録挑戦なるか・・・続報を楽しみに待ちたいです。