あらすじ:宇宙人に映画を見せるという目的のためにロケットを開発?
小学校時代の同級生 かずきと再会したOLのカナエは、かずきが兄弟で経営する下町工場の中で、一人宇宙ロケットを開発していることを知っちゃいます。かずきは、昔カナエと二人で見たUFOにお気に入りの映画を見せたいという、よくわからない目的のためにロケットの打ち上げを計画していたんです。
その目的になぜか感銘を受けたカナエは手伝いを申し出るものの、二人のプロジェクトは周囲を巻き込んで徐々に大きな事件を巻き起こしていくのです。果たして二人は無事ロケットを打ち上げることはできるのでしょうか??そして、宇宙人とはコンタクトできるのか?というドキドキハラハラ、ワクワクキラキラの青春物語です。
読後感は最高のカタルシス
OLをしているカナエちゃん。最初は茫洋としたかずきくんをちょっとバカにしてるんですが、彼が作ったロケットの凄さは直感的にすぐ理解します。で、スポンサー見つけて金稼ぎしちゃおうっと悪巧みをするんですが、それは敢えなく失敗・・・そしてそのうちかずきくんの純粋さと、自分たちで宇宙ロケットを飛ばしちゃおうという壮大な計画にのめり込み、夢中になっていくんです。
日常の決まりきった生活のリズムから外れて、でっかいことをやっちゃおうという、若いときならではの、思い切りよく小気味のいいプロジェクトに、はまっていっちゃう♡。その気持ち、とってもわかるなあ。
本作は、森田るい先生の初長編、ということですが、それにしても全1巻なんで、かなり短い作品と言えます。でも、それがいいんです。だらだら長く続けるんじゃなくて、単行本一冊にぎゅっと納めてくれたおかげで、ほんとにロケットのようにドドン!とシンプルで力強い、とっても素敵な作品になっているんです。
二人のプロジェクト、最初はただ楽しい、やっちゃおっか的な勢いで進んでいますが、完成が近づくごとに、徐々に大人の論理、社会ルールなどが二人を縛り始めます。そりゃそうでしょ、宇宙ロケットなんて誰でも発射できるわけないんですから。二人はやがて自分たちの試みがいかに無謀でナンセンスかを思い知らされますが、それでももう二人の気持ちは止まらない。突き進むしか無いんです。
ある意味、この物語は、ロケット版「イージー・ライダー」。若き二人が、子供の頃の思いを実現するために、いろんな軋轢や常識やルールから自らを解放して、でっかい夢にむけて駆け抜けていく。そんな爽やかな物語なんです。
二人の夢は果たして叶うのか、それとも?
それは本編をぜひ手にとって、最後まで読み切ってお確かめください。少なくとも読後感は最高のカタルシスが待っていることだけは保証いたします。