歌を愛し、ショーに憧れる者たちが、厳しい現実や将来への不安を乗り越えて、夢の実現に向けて勝負を挑む、人生の応援歌的作品。
2017年3月に公開された話題作がDVD/BDで発売開始
スティービー・ワンダーやテイラー・スウィフト、きゃりーぱみゅぱみゅなど、ご機嫌なナンバーをこれでもか!とばかりに詰め込んだ、名曲・ヒット曲満載の、音楽好きにはたまらないアニメーションムービー。
夢を持ち希望を抱く若者たちは、辛く苦しい現実の重みに喘ぐ。そんな彼らの前に示された一つの道しるべ。それは街のショー劇場が企画した歌のコンテスト。勝ち抜けば大きな賞金が得られるうえ、エンターテナーとしての将来が拓けるかもしれない。
コンテスト、それは人生を変える大きなステージ。
若者たちは全てを賭けて挑戦するのだ。
同時に、歌のコンテストを企画した劇場の支配人ムーンも、その成功に再起を賭けていた。劇場を愛し、ショーを愛する彼だったが、経営難が続き、このままでは、父が必死に働いて貯めたお金で遺してくれたその場所を、銀行に明け渡さなければならないのだった。
果たして彼らの挑戦は実を結ぶか。
世間に嘲笑されても、冷たい視線にさらされても、拳を握り、上を向く者たちを祝福するかのように、明るく力強い音楽が全編に流れる・・・。観る者を勇気づけるポジティブな名作だ。
僕が選ぶ見どころは、ゴリラのジョニーのパフォーマンス
とにかく映画全編にわたって思わず体を揺らしてしまうナンバーが流れて楽しい映画なのだが、特に見どころとしては、不良少年ジョニー(ダブルライダースにデニム姿のゴリラ)のパフォーマンスが僕のお気に入りだ。
寂れたボクシングジムを経営する彼の父親の裏の顔は強盗団のボスであり、ジョニーもまたその一員に加わることを強いられていた。ジョニーの夢はプロのシンガーになることだったが、強面の父親にそんなことを言えるわけもない。そんな苦悩を抱える彼の前に降って湧いたように訪れたチャンス、それがムーンの歌のコンテストだった。
しかし、慣れないピアノの弾き語りを命じられたものの、なかなか上達しないことに苛立ち、さらに夢を打ち明けた父親には勘当され、ヤケになったジョニーは、賞金を奪って自ら犯罪者への道を選ぼうとする。賞金の入った箱を盗みかけたとき、ジョニーはムーンのデスクに残されたコンテストの採点表に書き込まれた、自分への最大限の賞賛の言葉を見出して、正気を取り戻すのだ。
こんな自分でも期待してくれている人がいる、自分の才能を認めてくれる人がいる。
そんな歓喜がダークサイドに落ちかけたジョニーを引き戻し、懸命の練習に向かわせることになるのである。
果たして上達した彼のピアノと、美しくも力強い歌声が、多くの聴衆を感動させ、そして彼の夢をまともに取り上げようとしなかった父親の心をも動かす。
ジョニーが歌う「I'm still standing」はエルトン・ジョンの名曲だが、声優を務めた(タロン・エガートン。「キングスマン」シリーズで大ブレイク)が本家に勝るとも劣らない素晴らしい歌声で歌いきっていて、鳥肌がたつほど素晴らしい。
僕はまだ立っている。
どんな厳しい試練を受けても、立ち向かう。
そんなメッセージは、まさしく本作のメインテーマであり、登場人物全員の心の声を代弁している者であると思う。