異種格闘技戦!?を制覇したのはカワサキでした!
スーパーバイククラシックTTの特徴といえば、ヒストリック・ロードレースのルールの厳格さよりも、エンターテイメント性を重視したところにある、と言えるでしょう。
参加するマシンは、純然たる当時の古い車両も少なくありません。マイケル・ダンロップとダニー・ウェブが乗るスズキのGS1000R(XR69)は、エンジンは1986年型GSX-R1100をベースに1,216ccまで排気量を拡大。130馬力だったオリジナルに対し、175馬力!までパワーアップしています。
また、8月26日(土)のライトウェイトクラシックTT(250cc)を制したブルース・アンスティは、名門パジェッツの所有する1992年型ヤマハYZR500でスーパーバイククラシックTTに出場します。そして今年からは戦闘力調整として、カワサキZXR750は800ccのエンジンを搭載することが認められています。つまり、1980〜1990年代初頭にオリジナルが活躍していたTT-F1やスーパーバイク、そして一部のGPマシンなら出場がOKで、激しい競争という「ショー」を見せるために戦闘力調整を行うという、かなりアバウトなレギュレーションとも言えるでしょう。
そのほかの注目といえば、8月26日(土)のセニアクラシックTT(500cc)で優勝したジョシュ・ブルックスが、かつて英国TT-F1及びスーパーバイク選手権(BSB)で活躍した、ノートンのロータリーエンジン搭載車、RCW588に乗ることでしょう。
さて、迎えた決勝ですが、最初は予選最速だったM.ダンロップのGS1000RとB.アンスティのヤマハYZR500が序盤の首位争いの主役になると思われました。しかし、最初のセクターでの最速はZXR750に乗るディーン・ハリソンでした。M.ダンロップはマシンの不調を抱えているようで残念ながら後退してその後リタイア。1周目はハリソンが2位アンスティに8秒差をつけて制しました。3位はホースト・セイガーのZXR750がつけています。
この上位3台のオーダーは崩れることなく終盤まで続き、結局そのままの順位で表彰台が決まりました。ハリソンは最後は2位アンスティに30秒ほどの差があったので、最終ラップはクルージングする余裕の勝利。2位アンスティは最終周で最速ラップの平均127.496mph(約205.18km/h)をマークするものの、燃料食いの2ストロークV4の500ccゆえ給油などのタイムロスが大きく響いてしまった格好です。なお注目のJ.ブルックスは8位走行中に残念ながらリタイアでした。
ジュニアクラシックTTはベテランのマイケル・ラッターが優勝!
スーパーバイククラシックTTの前に開催されたジュニアクラシックTT(350cc)は、日程変更の影響で4周のレースが3周に減りました。マンクスノートンなどの単気筒市販レーサー勢は、これで4周だと給油が必要になる可能性大のマルチシリンダー車に対する、燃費のアドバンテージが消失したことになってしまいました。
レースを制覇したのは、ライトウェイトクラシックTTでは2位に甘んじたベテラン、M.ラッター(ホンダ)でした。彼にとっては、3年ぶり2度目となる勝利でした。
2位はMVアグスタに乗るリー・ジョンストン。2周目にピットストップしたことが、結果に影響してしまったようです。3位はセニアクラシックTTで2位に入ったジェーミー・カワード(ホンダ)が、今大会2度目の表彰台を獲得しています。
先述のとおり1980〜1990年代に比べ、近年のクラシックTTはヒストリック性よりもエンターテイメント性が強くなっている傾向にあります。マン島TTレギュラーたちが戦闘力の高いクラシックマシンで繰り広げる高度な戦いは、それはそれで確かにエキサイティングで面白いですが、根っからの古物好きの人や、ヒストリックロードレースの厳格さを求める人には、ちょっと寂しく感じる部分もあったりするようです。
ともあれ、世界最高峰のヒストリックロードレースとして、マン島のクラシックTTの価値は今も昔も不変なのは万人が認めるところでしょう。来年の戦いが、今から楽しみですね!