「モアナと伝説の海」は神と悪魔と半人半神、そして人間の少女が繰り広げる神話- 1/100の映画評

何不自由ない暮らしが約束された豊かな南の島。村長の娘として生まれたモアナは、幼い頃から海に好かれ、そして海に惹かれて育ったが、父の戒めによって海に出ることは許されなかった。
しかし、やがて島は邪悪な闇に覆われ始め、食物は枯れ、魚は獲れなくなる。モアナは皆の危機を救うため、祖母の教えに従い、海を越えて、島を守るための冒険に出る。
南太平洋の島々に伝わる伝説をモチーフとした海洋アドベンチャー。

あらすじ：祖母から聞かされた伝説に従い、冒険に出る南の島の少女

モトゥヌイ島の村長の娘モアナは、幼い頃から祖母からある伝説を聞かされて育った。
それは、約1000年前、女神テ・フィティによって海しかなかったこの世界に島や生命が生まれたが、半神半人のマウイが、人間の賞賛を求めてテ・フィティの「心」を盗み出したことで、この世に闇が生まれてしまった。しかも、マウイは「心」を奪おうとする、燃えたぎる溶岩の悪魔テ・カァに破れて姿を消し、「心」は海に落ちてしまう。そして、闇は徐々に広がり、やがて全ての島々を飲み込んでしまうだろう、というものだった。

やがて祖母の言葉通り、豊穣なはずだったモトゥヌイ島にも闇が近づき、魚は取れずココナッツも腐り始める。この危機を逃れるには、ラ・フィティに「心」を返すしかない。

海に愛された少女モアナは、行方をくらました半神半人マウイを探し出し、ラ・フィティに「心」を返す冒険に出ることを決意する。

果たしてモアナはマウイの協力を得られるのか。そして巨大な悪魔テ・カァをやり過ごしてテ・フィティの下にたどり着くことはできるのか？

南太平洋の島々に伝わる伝承の物語をベースにした見事な冒険活劇

モアナとはポリネシア語で「大洋」を意味するそうだ。また、マウイとは南太平洋全体に残る伝説の英雄マウイをモチーフにしている。島を海底から釣り上げたり、もう少し時間をかけて移動して日照時間を長くするよう太陽を説得したり、人々に操船技術や工芸品作りのノウハウを教えたりしたのが彼だということだ。

マウイは、陽気で自信に満ち溢れているけれど、母に愛されずに捨てられた過去を引きずり、神々によって超人的な能力を授かりはしたものの、人間たちに愛され賞賛されることでしか自分を慰められない、ギリシア神話の英雄に通じる複雑な人格を有している。その彼を本作は生き生きとリアルに描ききっており、非常に好ましい。
また、マウイを説得し、海の支援とともに女神の心を返還するという大冒険に挑む少女は、南の島の人々の特徴を見事に再現した愛らしい容姿で、我々を魅了してくれる。

本作は神話をベースに豊かでシンプルな冒険譚を、コンパクトなストーリーに仕上げており、子供だけでなく、大人でも十分楽しめる素晴らしいアニメーションだ。

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