ダウンフォースを「ファン」で発生
1960年代から1980年代初頭まで活躍したアメリカのシャパラル・カーズは、さまざまな独自技術を盛り込んだレーシングカーを開発し、カンナムやスポーツカー世界選手権などのカテゴリーに参戦しました。
シャパラルといえば、巨大なウイングなどの独特の空力デバイスの採用が有名ですが、後期の作である2Jはその究極といえる1台でした。ウイングは低速コーナーではダウンフォース効果が薄れるなどの弱点がありましたが、その対策として強制的にダウンフォースを発生させる・・・というのが2Jのコンセプトです。
どうやって発生させる・・・? シャパラルの答えは、巨大なファンを2つ車体後部に設置し、車体の内側の空気を引き出すことでダウンフォースを発生させるアイデアでした。いわゆる「ファン・カー」と呼ばれる仕組みで、F1でも1978年にブラバムBT46Bが同様のコンセプトのマシンを生み出され、デビュー戦のスウェーデンGPで優勝しています。
戦ったのは1シーズン限り・・・でした
シャパラル2Jは1970年のカンナムに投入されました。しかし予選ではライバルより速さを見せた2Jですが、メカニカルトラブルが多く決勝では際立った成績は残せませんでした。
当時シャパラルに対して、ファンは可動式空力装置だから違反、というクレームがライバルたちからつけられました。また、2Jはその構造から路面から吸い込んだ小石を後方へ吐き出すので、その真後ろを走るドライバーが危険だというクレームも上がっています。
そのクレームがとおり、2Jはサーキットを去ることになってしまいました。目立った記録は残せず、レーシングカーとしては失敗作である2Jですが、その可動式スカートは後のF1のグランドエフェクトマシンにも影響を与えたと言われています。
こちらの動画は、2011年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに参加した2Jの走りをおさめたものです。そのサウンドと、ファンが巻き起こす土埃をお楽しみください(笑)。