老いて傷ついた肉体を捨て、若く健康な理想的な肉体に記憶を転移させるという、最新テクノロジーとその”副作用”を描く、主演は「デッドプール」で日本でも大ブレイクしたライアン・レイノルズ。
◀︎ストーリー▶︎
肉体を脱皮し、記憶or魂を転移させることで死を免れることができる未来を描く
絶大な権力を誇り、かつそれを行使することを躊躇わないNYの建築王ダミアン・ヘイル。NYを造ったとさえ称されるほどの天才建築家であり有能なビジネスマンであった彼だが、70歳近くになり、さらに身体中を悪性の癌に蝕まれ、余命半年と宣言されていた。そんな彼に一人の男が恐るべき提案をする。彼とは天才科学者オルブライト。そして提案とは、遺伝子培養によって作り出された若く美しい理想的な肉体(クローン)に着替え、人生をやり直さないか、というものだった。
自分に反発する娘クレアとの長年の不仲も解消できず、まだ人生でやり残したことがあるような感覚に苛立つダミアンは 2億5000万ドルという高額なその申し出を受ける。資産を別口座に移し、若くたくましい肉体を得たダミアンは、最新で高性能な”新車”に乗り換えた喜びに浸りながら、何不自由のない暮らしを始める。
しかし、そんな彼はやがてリアルな幻覚に襲われる。そしてそれが幻覚ではなく、記憶であることが徐々に明らかになるにつれ、実は自分が得た肉体は<新品>ではなく<中古>、つまりクローンではなく、それまで生きていた実在の人物のそれであったことを知るのだ。
ダミアンが得た肉体の持ち主(マーク)には、妻と幼い娘がいた。そして彼は実は特殊部隊で高度に訓練された兵士だった。マークは病気の娘を救うため、金のために自分の肉体を差し出したのだった。その真実にたどり着いた時、秘密が露見することを恐れたオルブライトの組織が彼と、彼の”家族”の命を狙い始めるーーー。
それほど未来ではなく実現しそうなテクノロジーに、いまだ準備できていない我々は対応できるのか
本作では、まず富める者が死を免れることができるテクノロジーが紹介される。
それはクローン技術によって作り出されてはいるが魂を吹き込まれていない”新品の肉体”に、脳内データを転移させるというものだ。言い換えれば古い肉体から魂を抜き取って、新しい肉体に移し替える。(この場合の魂とは記憶のことだが、記憶をコピーするのはなく移動させることが本当にできるのかという疑問は横に置いておく)
だが、本作では、どうやら記憶の転移技術は実現したものの、クローン技術は未熟だったようだ。だからオルブライト率いる組織は、クローンを作るのではなく、生きている人間の肉体を使った。ということは、記憶というデータを転移させるだけでなく、上書きしようとしたことになる。
本作ではダミアンは、新たな肉体への脳内データの転移を行い、それが落ち着くまでの間、想定される副作用(めまいや幻覚など)を押さえ込むためという理由で、定期的に常用薬の使用を義務付けられる。しかしそれは、上書きされたはずのデータが復元されてしまうことを抑止する薬だった。
そのことを知ったダミアンは、二者択一を迫られることになる。
薬を飲み続けてマークの記憶を完全に消して、新しいカラダの中で生き続けるか、それとも薬を飲まずにマークのカラダの中で本物の死を迎えるか。
このように、本作に描かれるテクノロジーはさほど先ではない近未来に実現しそうなものばかりで、それらの組み合わせだ。
しかし、魂=記憶なのか、クローンに人権はあるのか、内臓などの移植が許されるなら肉体そのものを移植することが人道的に許される日は来るのか、など、少なからず我々が答えを出さなければならない問題をこの映画は提示してくれているのである。