フークワ監督自身「重要なのは『七人の侍』のDNAに忠実であること。クロサワが生きていれば、現代版のこの物語を観たいと思ってくれると信じている」と語っている。
五十数年ぶりに復活した「荒野の七人」(マグニフィセントセブン)
あらすじ
金鉱が発見された小さな町、ローズ・クリーク。金の独占的な採掘を目指す悪徳企業家バーソロミュー・ボーグは、ならず者たちを組織した軍勢を使って住民たちを脅し、反抗する者を射殺した。相場の3分の1程度の立ち退き料で町を明け渡さなければ皆殺しにする、という最終通告を残し、ボーグたちは一旦は立ち去るが、3週間後に舞い戻ると宣言する。
殺された住民の一人、マシューの妻エマは、町を救い、夫の復讐を果たすために、たまたま町を訪れた凄腕の委任執行官(≒賞金稼ぎ)のサム・チザムに全財産を差し出して用心棒として雇う。
絶望的な戦いと知りながら、なぜか用心棒を引き受けたチザムは、一人では何もできないと考え、助っ人を集め始める。こうして、チザムを含め、腕利きのアウトロー7人が集結した。
果たして彼らはボーグを斃してローズ・クリークを救うことができるのか?そして、勝ち目のない戦いを引き受けたチザムの真意とは?
黒澤明監督の名作「七人の侍」を強くリスペクトした作品
豪華キャストで実現した「荒野の七人」のリメイク作品だが、設定・基本ストーリーこそ同じながら、用心棒として集められた7人のアウトローは名前も人物も異なる、オリジナルのキャスティングになっている。むしろ敵軍団との戦闘シーンの戦略行動(爆薬を仕掛けたり、町を要塞化したりするなどの人数面での劣勢を補おうとする行為)は原作の「七人の侍」に近い。
主人公のサム・チザムを演じるのはデンゼル・ワシントン。「荒野の七人」ではユル・ブリンナーが演じたが、ここでは黒人のデンゼルが担当し、さらに(南北戦争の)元北軍の将校という設定が、「七人の侍」の主人公 勘兵衛により近いのも特徴。
つまり、本作は1970年公開の「荒野の七人」のリメイクであるが、その原案となった1954年公開「七人の侍」のDNAをより濃く再現しようとした西部劇であり、クロサワへのリスペクトを強く押し出そうとした作品であると言える。
多国籍軍となった7人のキャスト。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でブレイクしたクリス・プラットも良い味
本作の特徴としては、南北戦争のPSTDを抱えた登場人物が多く、戦国時代終盤の時代設定であった「七人の侍」との共通点がより濃く描かれていること、主人公のサム・チザムを黒人にしたほか、東洋人やネイティブアメリカン(いわゆるインディアン)の戦士を混ぜるなど、多人種・多民族軍としたことがある。
こうした設定が、オリジナルの「荒野の七人」よりも、人物描写やストーリーに重みを与えていると言えるだろう。
戦闘シーンは見応えがあり、7人のアウトローたちが劣勢の中で徐々に傷つき斃れていく様は荘厳なまでに美しい。
本作独自の解釈としては、チザムが絶望的な戦いの依頼を受けたその理由が最後の最後に分かるあたりだろう。それを蛇足と取るか、深みを与えるスパイスととるかで、評価が分かれるところだろう。
ただ、全体としてスリリングで楽しい作品であり、観て損のない映画だと思う。
オリジナルではスティーブ・マックイーンが演じた役に相当するジョシュ・ファラデー役のクリス・プラットが、手品と二丁拳銃の使い手であり口八丁手八丁で相手をけむに巻く楽しい人物を飄々と演じていて、彼の活躍に注目するのも良い見方になるだろう。