SF史上最高の名作と謳われる「ブレードランナー」の監督で知られるリドリー・スコット製作。
AIとバイオテクノロジーによる人工生命体の暴走による恐怖を描く、リドリー・スコットお得意の設定で、彼のファンなら思わずニヤリとしてしまうシーンがたくさん。

「エクス・マキナ」にも通じる世界観

本作は「ブレードランナー」同様に、人間に非常に近しい有機的な肉体と容姿を持つ人工生命体の暴走のリスク、そして生命とは何か、という普遍的な問いをテーマにしている。「ブレードランナー」の人工生命体レプリカントは、身体能力的には人類を遥かに超えるゆえ、生殖機能は与えられておらず、しかもその寿命は通常の人間より遥かに短く設定されている。
「ブレードランナー」の場合は、そのタイムリミットの存在を知ってしまったレプリカントが人間に対して反乱を起こすが、本作の場合は、研究所の外に自分だけが知らなかった広く美しい世界が存在することを知った人工生命体L-9 プロトタイプ(モーガンと名付けられている)が、狭い研究所に閉じ込められていることに不満を爆発させることで重大事件を引き起こす。

AIによる知性と好奇心、それに人間並みの感情がかけ合わさったことで、手段を選ばず自由を得ようとするところは「エクス・マキナ」と共通した世界観であるとも言える。また、ハイテク企業によって研究開発された人工生命体を主人公にしていることも非常に近しい。

「エクス・マキナ」のヒロインはAIを備えた機械の体(=アンドロイド)だったが、本作のヒロインであるモーガンはレプリカント同様人間と同じ有機的な肉体を持っており、AIによって制御されている。その意味で、「ブレードランナー」と「エクス・マキナ」のハイブリッド的な作品と言える。

ストーリー

ハイテク企業シンセクト社の研究施設で生み出された人工生命体L-9 プロトタイプは、モーガンと名付けられ、5歳になる頃には10代後半の姿に成長していた。バイオテクノロジーによって生成された肉体に、ナノテクノロジーにより神経系統はAIによって制御されている彼女は、感情を持ち、高い知性を持つようになっていた。

研究所の中が世界の全てだと思っていた彼女は、あるときから世界がもっと広く美しいことを知ってしまい、それ以降 隔絶された狭い空間に閉じ込められていることに強く不満を持つようになる。その結果、彼女は研究員に暴力をふるってしまい、L-9プロジェクト自体の存続を疑問視した本社は、危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズと心理評価の専門家シャピロ博士を施設に送り、モーガンを廃棄処分にするかどうかの判断を彼らに委ねた。

シャピロ博士はリーや研究員の前で、モーガンと対面し、圧迫面接のような態度でモーガンを追い詰める。初めは冷静に受け答えをしていたモーガンだったが、次第に苛立ち始め、ついには暴発してシャピロ博士の頚動脈を噛み切って殺してしまう。

一度は捕らえられ、殺傷処分となったモーガンだったが、すんでのところで逃げ出し、研究員達を無残に殺害して研究所を逃げ出す。危機管理コンサルタントのリーは怪我を負いながらもモーガンを追う。殺人マシンと化したモーガンは、果たしてどこへ向かうのか。そしてリーは彼女の暴走を止められるのか・・・。

よくあるテーマだが、実にうまく作られていて見応えあり

本作は「ブレードランナー」「エクス・マキナ」などと同じく、人間が創り出した生命体の暴走による危機を描いているが、前述のように、AIとバイオテクノロジーの組み合わせであるところが新しい。

心理評価を行うシャピロ博士がモーガンを面談するところは、ブレードランナーが人間に紛れて脱走しようとするレプリカントを発見するために行うチューリング・テストに似ていて、同じ製作者の存在を意識させられて面白い。

本作は日本では劇場公開はされなかったが、非常に見応えがあり、おそらくは低予算だと思うがスリリングで、静かながらヒタヒタと何か不気味なものが近づいてくるような不安と恐怖があって、実に見応えがある。90分くらいの短さも良い。

AIが人類を駆逐する、といったテーマは最近とにかく多いが、本作はその中でもかなり高評価を与えていい作品だと思う。

画像: 『モーガン プロトタイプ L-9』2017.3.22先行デジタル配信/2017.4.5ブルーレイ&DVDリリース www.youtube.com

『モーガン プロトタイプ L-9』2017.3.22先行デジタル配信/2017.4.5ブルーレイ&DVDリリース

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