イイ女とイイ車には目がない私だが、最近ロレンスを通じて知った作家・沙村広明先生の作品にハマっていることを告白しよう。
キムタク主演・三池 崇史監督の「無限の住人」の原作者として、最近では多くの方がご存じだと思うが、残念なことに私の周囲には先生の作品を読んでいる者があまりいない。そこで、私は恐れ多いながら私設応援団としてここに沙村作品の、最大の魅力をご紹介したいと思うのだ。
最大の魅力、それはオンナだ。沙村先生が描くオンナたちはどの女性をとっても実に魅力的。彼女たちを知ったら最後、死ぬまでどハマりすること、間違いなしだ。

とにかく男勝りで気っ風がいい。

沙村広明先生が描き出す女性たちの多くはいくつかの共通点を持っている。
例えば長く美しい髪。体つきはあくまで華奢でスリムだ。スタイルは総じていいと思う。
(どの登場人物もそれほど巨乳というわけでもなく、グラマラスな感じは全くないのも共通している)

基本的にどの女性も生活スタイルはだらしないというか、タバコや酒は手放せない場合が多いし、定職にもつかないでふらふらしてしまうこともよくある。男のほうから寄ってくる美しい容姿を持っているからか、困ったことがあってもなんとかなると思い込める根拠のない自信がある。その結果なのだろうが、いつも強気で気っ風がいい。

正直いって、世の中にこういう女性がそこら中にいて、うっかり知り合ってしまったとしたら、それは幸福なのか不幸なのか、ちょっとわからない。ズルズルとどん詰まりの人生に落ちていきそうな気もするし、人生と引き換えに濃密な時間と快楽を与えてくれるオンナとの出会いはまさにエクスタシーであるような気もするのだ。

画像: 情慾(エロス)と暴力(バイオレンス)の完璧な融合……これが“叛逆ずべ公アクション” 「ベアゲルター」(講談社)

情慾(エロス)と暴力(バイオレンス)の完璧な融合……これが“叛逆ずべ公アクション”
「ベアゲルター」(講談社)

素直に物欲をぶつけてくるマテリアルガールぶりがいい

下のカットは摩訶不思議なSFタッチの作品「ハルシオン・ランチ」(講談社)のワンシーンだ。メタ子さんは左側の女性で、メタ子さんの右横の二人は異星人(正確に言うと異星人そのものではないのだが、そこは本作をみてください)だ。
将来的にどうなりたくて生きているのか、生きる意味を問われて、メタ子さんは「ランボルギーニ ムルシエラゴのオーナーになる事と・・・」と答える。その答えに異星人(ではないが)は「物欲にまみれたいい意見ですね」と無表情に反応する。

思うに、人生の意味、目的を問われて、とっさに答えるとして、メタ子さんの回答は絶妙だ。彼女は19才のニートなのだが、こういう大それた夢を無邪気に答えるのが大変よろしい。これが「好きな人と結婚」とか「かわいいママになること」とか、「海外で暮らしたい」など、当たり障りのないことを言われたら、ああそうですか、と普通に流して終わりだ。
また、総理大臣になる、とか、世界を平和にしたい、などと言われてもどの口で言うか、とムカッ腹を立ててしまいそうだ。さらにいえば、金持ちになりたいなどと曖昧なことを言わないのもいい。具体的かつむやみにアゲアゲなところがたまらないじゃないか、と私は思うのだ。物欲まみれ、でいいじゃないか。上等だ、と私は思う。

蓮っ葉、という言葉を最近の若者は知らないかもしれない。(ここでもクリックして調べてください)蓮っ葉と言えばそれは通常は悪口なのだが、このメタ子さんの場合は褒め言葉として使う。彼女は実は無軌道な若者であるように見えて(いや、生活そのものは実に無軌道でだらしないのだが)、主人公(倒産した会社を再建中の中年男)に対しては献身的な態度を示す。このギャップが私にはたまらないのだ。

画像: なんでも食べちゃう不思議なオンナたちと、会社再建中の中年男のSF的邂逅 「ハルシオン・ランチ」(講談社)

なんでも食べちゃう不思議なオンナたちと、会社再建中の中年男のSF的邂逅
「ハルシオン・ランチ」(講談社)

傍目には不安定で危なかっしいのだが、それでも一人で生きているいいオンナ

現在連載中の「波よ聞いてくれ」のヒロイン 鼓田ミナレも実に魅力的だ。
20代前半にして、どうにもあばずれ感がすごい。見た目はちょっとやそっとでは落ちなさそうな冷たさを湛えた美人なのだが、喋らせるとこれまた蓮っ葉 で、酒に溺れてアパートの別の住人の部屋で寝てしまうようなだらしなさ笑。
いつも金には困っているし、男になけなしの金を騙し取られるお人好しなのに、男に単純に頼ったり、利用しようとするような計算高さがない。結局は、男とは対等な関係でいようとするし、それを当たり前と思っている彼女は、傍目には不安定で危なかっしいのだが、それでも自立していて、自分の意思と感情で生きている。

つまり、とびきりいいオンナ、なのである。

画像: 黙ってれば超美人なのに、喋らすとべらんめえで、きっぷが良くて、性格いいけどちょっとだらしない・・そんなお姉さん、ミナレさんはラジオのパーソナリティーに。 「波よ聞いてくれ」(講談社) www.amazon.co.jp

黙ってれば超美人なのに、喋らすとべらんめえで、きっぷが良くて、性格いいけどちょっとだらしない・・そんなお姉さん、ミナレさんはラジオのパーソナリティーに。
「波よ聞いてくれ」(講談社)

www.amazon.co.jp

気っ風がよくて、性格いいけどだらしなくて、だけど見た目は絶望したくなるほどの美人と逃避行してみたくありませんか?

沙村広明先生はストーリーテラーであり、巧みな人物描写と緻密な筋書きを常に用意してくれていて、恐らくは劇画の原作、脚本だけでも生きていくことができる、素晴らしい才能をお持ちである。

しかし、やはりその粗いタッチの中で繊細に描き出されるキャラクターたちの魅力は抗しがたいものがある。多くの作品は不条理で刹那的で容赦のない暴力に満ちているし、成人してだいぶ経つ私のようないい歳の男をモヤモヤさせる強烈なエロスを包含している。女性だけでなく、男性登場人物もまたとても魅力的で、斬新かつ含蓄ある豊かなセリフで我々を楽しませてくれる。

万華鏡のようにきらめく魅力を持つ沙村作品を知らないで過ごすには、人生はひどく短いぞ、と私は強調したい。

そして、そのうえで、沙村先生が作り出す女性たち、いいオンナたちに思い切りハマることこそが、私のオススメなのだ。

気っ風がよくて、性格いいけどだらしなくて、だけど見た目は絶望したくなるほどの美人。
どうです?彼女たちと逃避行してみたくありませんか?二人でボストンバッグをトランクに放り込んで、あてもなく夜のハイウェイを走り出す、そんな人生に憧れませんか?

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