陸上では、定番の「クラウチングスタート」。
水泳では、両足を揃えた状態で始まる、「グラブスタート」。
ボートレースでは決められた時間内にスタートラインを通過する「フライングスタート」。
スタートの仕方って、競技のルールやレースの種類で様々な方法がありますね。
今回は、鈴鹿8耐のスタートの疑問。
どうやら鈴鹿8耐では、「ルマン式スタート」という方法でレースが開始されるようです。
“ルマン式スタート”ってどんなスタート方法??
こんな方法、いままで聞いたことがありません。一体どんな方法なのでしょう?教えて、8耐マスターの宮﨑さん〜〜!
じつは、ルーツである4輪のルマンは、もうルマン式スタートではありません!
ルマン24時間耐久レースというと、ひとつは4輪自動車、もうひとつはモーターサイクルレースと、ふたつの「ルマン24時間耐久」があるのはご存知でしょうか? ルマン式スタートは、前者の4輪のルマン24時間耐久のスタート方法が由来なのです。
4輪のルマン24時間レースは、F1モナコGP、インディ500と並び、世界3大レースとして認識されている伝統のイベントです。ルマン式スタートの進行は、まずホームストレートのピット側にマシンを並べるところから始まります。ドライバー(ライダー)はホームストレートの反対側の端に並び、スタートの合図とともにホームストレートを自身の足で横断。マシンに乗り込んで、発進します。
なお4輪のルマン24時間レースは、1962年までは参加マシンの排気量順にグリッドに並べていましたが、1963年からは予選でグリッド順を決定するようになります。マシンのシートめがけて乗り込み、シートベルトをつけて、エンジンをスタートさせ、ギアを入れ、発進・・・という手順でレースをスタートさせました。
しかし、この「手順」というものが、安全性を考慮するとヤバイ・・・と問題になってきます。つまり、みなスタートで急ぐので、ちゃんとシートベルトをつけずに走ってしまったり・・・ということがしょっちゅうでした。
そして1969年を最後に安全性を理由にルマン式スタートは廃止され、1970年はホームストレート端(ピット寄り)に並べられたマシンにあらかじめドライバーが乗り込み、旗が振られてスタート、という方式になります。そして1971年からは、現在に至るローリングスタートが採用されることになったのです(予選上位順に先導車の後ろを並んで走り、先導車が本コース上から外れ、スタートの合図が出たら競技開始・・・という方式で、インディアナポリス・スタートとも呼ばれています)。
2輪の耐久レースのスタート方式として、今も存続するルマン式スタート
なお、現在のEWC=世界耐久選手権のルーツである、FIMエンデュランスカップは1960年に成立しました。その前からも、2輪の耐久レースは欧州大陸や英国の各地で行われていましたが、シリーズ戦として成立したのはこのときからです(※ 2輪の耐久レースの歴史については、また回を改めてご紹介したく思います)。
FIMエンデュランスカップ成立前には、すでに多くのメジャーな2輪の耐久レースでもルマン式スタートが採用されていました。そして周知のとおり、その伝統は今日にも受け継がれています。またルマン式スタート鈴鹿8耐だけではなく、草レースの耐久イベントでもおなじみなので、読者のみなさんのなかには、体験したことがある人もいるのでは? アレ、ドキドキしますよね・・・。
なお4輪と違って2輪は乗車時にシートベルトをする必要はありませんが、エンジンの始動についてはかつての4輪ルマン式スタート同様に乗り手=ライダーが独力でやらないといけないのは一緒です。そのため、今もEWCに参加する2輪耐久レーサーは、キック/セルなど始動装置を備える・・・ことがレギュレーションで決められているのです。
こちらは2007年大会のルマン式スタートの解説ムービーです。どきどきワクワクの瞬間を、みなさんも観客の気持ちになって予習?しておいてください!