「たかだか十数年のキャリアでベテラン編集者と呼ばれるのはおこがましい」と謙遜する安田だが、「メディアは情報の媒介者。その情報を受け手がどうとらえるかの認識がないまま、単なる利益を得るためのツールとしてコンテンツを制作して公開してしまう“メディア”が多すぎる」と、昨今の事情に警鐘を鳴らしている。
リスクを恐れず、世間の風当たりにもひるまず、信念をもって前に進む男たち。同時に、ストイックなだけでなく、人生を楽しみ 快活に笑い、欲望や野心を隠さないが爽やかさを失わないイイ男たち。彼らをロレンスMENと呼び、不定期に紹介していく。
南インドカレー限定なんです(安田氏)
趣味は、プログラミングと上方落語、南インドカレーだという。
北インドはだめなんですか? と問うと、南インド限定です、と言い切り、北インド料理と南インド料理の違いをとうとうと語った。
カレーはカレーだろう、と思うのは素人の浅はかさ。たしかに北と南では全くの別物の料理になる。
言われてみれば、おなじ「寿司」でも江戸前寿司と鮒寿司は別物だ。それを同じと言うわけにはいかない。メディアとして常に正確な情報を届け、細かな差異にも気を配る。読者から信頼していただけるコンテンツを作るということはそういうことだと語る安田の、面目躍如といったところだろう。
ビジネスである以上マネタイズを優先するのは当たり前、でも情報を扱う者には大切なことも存在する
メディア事業者であってもなくても、ビジネスとして行う以上、売上を伸ばして利益を確保していくことは重要だ。安田はそれを重々承知している。いくら良いコンテンツを作って社会の役に立っていたとしても、売上がなければその「すばらしいこと」を継続できないからだ。
しかし、それでも、と安田は言う。
メディア編集者として、何より重要なことは、読者の信頼を得ることだ、と。お金儲けは重要だが、それを後回しにしてでも、読者から信頼していただけるような「場」を作り続ける、という意識が大切なのだ、と安田は強調するのである。コンテンツはあくまでもその手段でしかない。
情報を世に対して公開するということは、その情報を受け取る人がいる。中途半端なキモチで作った、正確ではない・本質的ではない情報を公開したら、そのせいで情報の受け手に良くない結果が生じることがあるだろう。それでも平気で同じことを続けられる人が運営する「メディア」ばかりになった世界は、本当に良い世界だろうか。
コンテンツを作るということは、生半可なことではない。覚悟を持って臨むべき。
カメラを向けるとおどけた表情を見せる安田だが、この言葉を発する時の顔は真剣そのものであった。