2017年2月26(日)まで開催している「カワサキ モーターサイクルフェア2017」に行ってみて、思ったことがあります。そもそも“カワサキ”って何でオートバイを作ってるんでしょう? 母体は“川崎重工業”です。オートバイを造る重工業の大企業なんてカワサキだけ。その理由は、Ninja H2の中にも潜んでいました。

Ninja H2のエンブレムにもなっている「コレ」を知っていますか?

川崎重工業株式会社のマークなんですが、その由来は一体なんでしょう?

画像: 【KAWASAKI】なぜ川崎重工はバイクを造るのか?
その答えはNinja H2の中にあった。
  • 造船からスタートした会社らしく、喫水線やスラスターなどの船舶用マークがモチーフです!

    残念! それっぽいですけど、答えは創業者・川崎正蔵氏が考案した「川」の字を図案化したものなんです。

  • 鉄鋼業や化学工業など「重工業」であることを総合的に示すマークじゃないんですか?

    残念! 神戸のカワサキワールドに、その答えが待っています。是非一度遊びに行ってみてくださいね。

  • シンプルに創業者の名前をベースにして、図案化されたマークだと思います。

    さすが! 大正解です。創業者・川崎正蔵氏が図案化した「川」の字がモチーフなんですよね!

  • 造船からスタートした会社らしく、喫水線やスラスターなどの船舶用マークがモチーフです!
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  • 鉄鋼業や化学工業など「重工業」であることを総合的に示すマークじゃないんですか?
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  • シンプルに創業者の名前をベースにして、図案化されたマークだと思います。
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今の川崎重工業(株)のはじまりは、1878年に創始者の川崎正蔵氏が東京/築地に「川崎築地造船所」をスタートさせたことから始まりました。我らがカワサキの起源は造船だったんですね。その後、川崎造船所となった後、1894年に日清戦争が勃発。川崎造船所は船の修理を中心に依頼が殺到し、企業として成長していったんです。

そして、企業として大きくなっていったカワサキは航空機産業にも進出し、1922年には自社製の飛行機も完成させます。1939年には社名を今の「川崎重工業」に変更。1941年に造られた戦闘機「飛燕」は有名ですよね。最速を目指した「カッコいい戦闘機」の代名詞として、今でも数多くのファンがいます。

画像: カワサキ自らの手によって完全レストアされた三式戦闘機「飛燕」は国産初の水冷エンジンを搭載した戦闘機でした。世界最速を目指していたのが、今も昔も変わらぬカワサキらしさ、のひとつです。

カワサキ自らの手によって完全レストアされた三式戦闘機「飛燕」は国産初の水冷エンジンを搭載した戦闘機でした。世界最速を目指していたのが、今も昔も変わらぬカワサキらしさ、のひとつです。

オートバイに参入したキッカケは……

その理由はズバリ、戦争でした。太平洋戦争で敗戦国となった日本は航空機を製造することを禁止されてしまいます。しかし、カワサキにはエンジンを製造するための世界トップレベルの技術者もいるし、それを造る設備もあります。そこで当時ブームを巻き起こしていたモーターバイク市場に進出。エンジニアたちは新しいチャレンジに情熱を注ぎ、オートバイ市場に本格参入していきます。

画像: KE-1のKEはカワサキ・エンジンの意味とのことです。1953年にはバイク用として空冷2サイクルのKB-1(カワサキ・バイクエンジン-1型)として販売を開始しました。同年には川崎明発工業が発足しています。

KE-1のKEはカワサキ・エンジンの意味とのことです。1953年にはバイク用として空冷2サイクルのKB-1(カワサキ・バイクエンジン-1型)として販売を開始しました。同年には川崎明発工業が発足しています。

造船や航空機、鉄鋼業など大規模な産業で培ってきた高い技術を小さなエンジンに凝縮し、まもなく「カワサキ製エンジンは性能が良い」という評価を獲得していきます。「メイハツ」っていう昔のオートバイメーカーをご存じでしょうか?カワサキ航空機の製造した小型2サイクルエンジンを搭載した「明石の発動機」のオートバイ。略してメイハツって訳ですね。

画像: KB-7型エンジンを搭載したメイハツ125-600型。大盛況のうちに幕を閉じたカワサキモーターサイクルフェア2017に展示されていました。

KB-7型エンジンを搭載したメイハツ125-600型。大盛況のうちに幕を閉じたカワサキモーターサイクルフェア2017に展示されていました。

そして「世界最速」を目指し続ける
今のカワサキへと続きます

画像1: 撮影/小平 寛

撮影/小平 寛

H1やZ1、ニンジャGPZ900R。
数々の伝説を経て現代の「Ninja H2」へ

その後、2サイクルエンジンが主力だったカワサキは、4サイクルエンジンを製造する技術に強かったメグロを吸収合併し、4サイクル分野でも活躍します。2サイクルでは3気筒500ccのH1で世界を驚かせ、4サイクルではW1からZ1などを開発。巨大市場だった北米で数多くの成功を収めます。

その歴史の中で、カワサキがいつも挑んできたのが「世界最速」でした。

もちろんカワサキの現行ラインアップの中にも、そのスピリットを受け継ぐオートバイがあります。皆さんもご存じだとは思いますが、1000ccの4気筒エンジンに過給機スーパーチャージャーを搭載した「Ninja H2」がそれです。

画像2: 撮影/小平 寛

撮影/小平 寛

このオートバイは、今、世界中にあるオートバイの中では完全に「異端」と言って良い存在だとボクは思っています。幸運なことに1回だけ乗ったことがあるのですが、その時の記憶が今でも忘れられません。

ボクは、贅沢なことに色んなオートバイを乗ることができる職業です。でもそうすると「1000ccの4気筒エンジンだと、これくらいのパワーだろう」とか「このジャンルのバイクは、こういう加速のしかたが多い」っていうような、経験からくる先入観ができてしまうんですね。それが、Ninja H2にはすべて当てはまりませんでした。似ているものがない……まったく比較できないんです。

これはオートバイなのか? とすら思ったほど、衝撃の体験でした。

Ninja H2の中にある「挑戦する姿勢」こそがカワサキらしさ

画像: Ninja H2の中にある「挑戦する姿勢」こそがカワサキらしさ

H2Rで挑んだ最高速へのチャレンジ

2017年2月26(日)まで神戸海洋博物館で開催されていた「カワサキモーターサイクルフェア2017」ではNinja H2のフルパワー仕様となるH2R(公道走行不可)がアメリカ・ソルトレイクフラッツで最高速に挑んだ様子も展示されていました。写真の車両展示の横にはオンボードカメラの映像があるんですが、時速350キロから溜めて、溜めて……400キロに向かってガバッとスロットルを開ける瞬間の緊迫感が半端じゃありません。しかも、350km/hオーバーから400km/hの加速が……速いっ!

画像: カワサキモーターサイクルフェア2017は、2/26(日)まで常設展とは別に大ホールで開催されています。

カワサキモーターサイクルフェア2017は、2/26(日)まで常設展とは別に大ホールで開催されています。

そのカワサキの歴代の挑戦の軌跡こそが、今、神戸海洋博物館/カワサキワールドで行われている「カワサキモーターサイクルフェア 2017」のテーマだったんです。『挑戦の軌跡と夢』。そこにはカワサキがオートバイを創りつづける根源的な理由と、描く未来が凝縮された空間が広がっていて、ライダーなら誰もが心に残るイベントになっていました。

Ninja H2から拡がる「未来への夢」

そして、フェアに展示されていた、もはやオートバイの枠にすら留まらないNinja H2Rをベースに未来を描いた「夢」も、行けなかった人のためにチラ見せ!

いやぁ、この企画展を担当した人物は最高に楽しかったでしょうね。もちろん計算上での話ですが、Ninja H2そのまま翼をつけたら飛べるか?とか、じゃあ、飛び続けるには? その次はどうする?? って……ある意味、エンジニア魂が爆発しておりました。でも、見てて本当にワクワクしましたよ!

川崎重工がオートバイを造る理由

これまでのチャレンジの歴史と未来への夢。イベント会場でそれらを見ていて、ひとつ腑に落ちたことがありました。川崎重工業という大企業がオートバイにこだわる理由。それは、こういう『可能性』のためだろうな、ということです。川崎重工はウルトラ大企業ですから、おそらくですが「何かに挑戦する」ことに難しさがあるはずです。どこでも同じことですが、大きな組織であるほどに、軽率な動きはできませんからね。

これは、あくまで主観です。ボクは川崎重工業という大企業にとって「チャレンジする場所」こそが、オートバイというフィールドなのではないか、と感じています。造船や航空機、宇宙開発などは、事業が大規模すぎておいそれとは動けない。だからカワサキは、オートバイで夢を紡ぐのではないでしょうか。

画像3: 撮影/小平 寛

撮影/小平 寛

カワサキがNinja H2やH2Rを生み出した理由は、単純に「速さ」を求めただけじゃない。未来の可能性へ挑戦するためだったのかもしれません。そして、それはきっと、いつの時代もカワサキのオートバイに共通するアイデンティティで、これからも変わらず受け継がれていく哲学なのでしょう。

カワサキだけが、他とは違う。

オートバイを愛するボクたちライダーがそう感じる理由もまた、そこにあるに違いありません。みなさんは、そうは思いませんか?

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