1970年代に生まれたホサック・フォーク
ホサック・フォークは、マクラーレンで働いていた経験のある英国出身(アフリカの旧ローデシア育ち)の設計者、ノーマン・ホサックが開発しました。彼はモーターサイクル好きで、マクラーレンを辞めたあと趣味のロードレースをヤマセル(英国のシーリー・フレームにヤマハ2ストローク2気筒を搭載)で楽しんでいましたが、当時のテレスコピックフォークの性能に不満を覚えるようになりました。
そしてホサックは、4輪レーシングカーの仕事の経験を活かし、ふたつのウィッシュボーン、ひとつのアップライト、そしてステアリングリンケージからなる独自のフォークを1974年に開発しました。その構成は4輪車用に似ていますが、アップライトが支える車輪の軸は90度向きが変わっています。
ホサックは1970〜1980年代、そして今に至るまでホサック・フォークの改良に熱心に取り組んでおります。BMWのK1300、K1600に採用されているフロントエンド、「デュオレバー」とかつての「テレレバー」がこのホサック・フォークの影響を強く受けていることは、BMW乗りなら知らぬ者がいないほど有名なエピソードです。
フロントサスペンション技術のブレイクスルーになるのでしょうか?
ホンダが取得したパテントは、ホサック・フォークのシステムに改良を加えたもの、といえます。ステアリングパイブは、ウィッシュボーンのフロントピボットポイントの後ろに取り付けられているのが特徴で、構造はホサック・フォークよりもコンパクトになっています。
MOTORCYCLISTの記事では、将来のMotoGPマシンにこの改良型ホサック・フォークを採用するのでは? と推理しています。
ウィッシュボーンアレンジはジオメトリ変更が容易で、ブレーキング時のアンチダイブ効果が得やすい構造です。そしてフロントエンド伸縮で変化するホイールベース量もわずかという特性があります。 近年、よりブレーキングがハードになっているMotoGPでは、これらの特徴はテレスコピックフォークを採用するライバルたちよりも、アドバンテージになる可能性を秘めていると言えるでしょう。
特許のブループリントが示している、ハンドルバーの位置・・・そしてコンパクト化に専心していると思われる構造などから、やはりこれはロードレーサー、もしくは高性能ロードスポーツへの採用を強く意識したもの・・・と思ってしまいますね。シーズン中の開発が厳しく規制されているMotoGPマシンのエンジンですが、車体のほうは自由にイジれる・・・という現状にもマッチします・・・。
BOTT(バトル・オブ・ザ・ツイン)など、限られたロードレースのフィールドではありますが、かつてはニュージーランドのブリッテンV1000が、ダブルウィッシュボーンのフロントエンドを採用した成功例もありますね・・・。まぁすべては想像(妄想?)に過ぎませんが、長らくモーターサイクルのフロントエンドとして定着しているテレスコピックに代わるオルタナティブ・・・として、この改良型ホサック・フォークが活用される日がくるのか・・・注目していきたいです!