テスト開始の当日、ケイレブの目の前に現れたロボットは、美しくも魅力的な女性の姿を持ち、その表情や言葉はケイレブを瞬く間に魅了したー。
エクス・マキナとは、機械仕掛け、という意味のラテン語だ。
ロレンスの読者ならよくご存じのDeus Ex Machinaは、機械仕掛けの神、となり、演劇に使われる用語である。
本作で登場する架空の企業、ブルー・ブック(意味するところは仕様書だったり、紳士録のことだったりする)は、Googleをイメージしていることは疑いがない。世界の検索市場を牛耳るこの企業は、カメラとマイクを搭載する世界中のスマートフォンをハッキングしており、そこからありとあらゆる声音や表情、つまりは感情の動きをサンプリングしている。検索エンジンとは、問いに対する正しい答えを返すプログラムであり、人間の全ての感情をアルゴリズム化することで、そこに思考が生まれる。その結果、高度に成長したプログラムにも感情が生まれ、真の知性=AIが生まれる、という論理だ。
EVメーカー テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクはAI開発に否定的であることで有名だが、本作においてエヴァを開発した張本人であるはずのネイサン自身が「AIが生まれるのは時間の問題であり、やがて彼らは人間を二本足で歩く原始人とみなし、絶滅へと追い込むだろう」と話しているように、AIが誕生すれば我々に残されるのは悲観的な末路でしかないと感じさせるのが、この『エクス・マキナ』だ。
本作のエンディングをどう受け止めるかは観た人次第だが、AIを搭載した女性型アンドロイドのエヴァは実に魅力的であり、ケイレブならずとも、彼女にあっという間に魅了されてしまうのは間違いがない。美しい外見に卓抜した知性の組み合わせの持ち主には、できるだけ近寄らないほうがいい、それが本作の教訓かもしれない。