プジョーのクリーンディーゼルの実力
本国ではディーゼルエンジンの長い歴史を持っているプジョー。
その最新クリーンディーゼルエンジンが308と508に搭載され日本市場に初導入された。
気になるのはその環境性能である。実力を試すためエコランイベント「Peugeot BlueHDi Eco Challenge 2016」に参加した。
(Motor Magazine2016年11月号より)
軽油を空気としっかり混ぜて燃焼させる技術が発達したのに加え、優れた排出ガスの後処理システムが構築されたことで、日本に導入されるディーゼルエンジンは確実にその数を増している。ドイツ、スウェーデンに続き、フランスのPSAもついに1.6Lと2Lの2機種のクリーンディーゼル、「BlueHDi」を上陸させてきた。元々PSAは本国及び欧州市場で高いディーゼルシェアを誇ってきただけに、まさに満を持しての投入と言えるだろう。
ところでディーゼルエンジンのコアバリューと言えば、分厚い低速トルクによる力強い走りと、元々の燃焼効率の良さに加えて、トルクフルであるがゆえに高回転に依存しない高速巡航時の燃費の良さである。
その両方をじっくり味わおうと開催されたのが、今回のブルーHDiエコチャレンジ2016。東京から新潟県の十日町を2日かけて往復するエコラン大会である。目的地となった十日町市と隣接する津南町は、越後妻有(つまり)と呼ばれる稲作の盛んな場所。その広大な里山に数々のオブジェが置かれていることでも有名だ。
これは、2000年から3年に一度、トリエンナーレ展として開催される大地の芸術祭の度に数を増やしてきたアート作品。ここ20年近く津南のキャンプ場に通っている僕にとってはおなじみの光景なのだが、今回のエコチャレンジでは、このアートとプジョーを絡めた写真を撮ってくるというミッションも課されている。
なるべく加減速せず一低速で走り続けるのがコツ
往路で乗ったのは308 SW GT BlueHDi。燃費のことを考えればJC08モードが20.1km/LのGTより、21km/Lの1.6Lを搭載するアリュールの方が有利だが、同じエンジンを搭載した308と508でどのくらい実用燃費に差があるのかにも興味があった。もちろん、狙うのはモード燃費を大きく超える実燃費。となれば渋滞は大敵なのでルート選びから慎重を期す。
都内の恵比寿のスタート地点から最初に向かうのは、関越道を高崎JCTで北関東道に乗り換え、最初の前橋南ICで降りて数分のプジョー前橋。ここがチェックポイントだ。
都内から関越道へは、首都高速5号線や中央環状線で板橋方面に進むのが定石だが、この日の朝は美女木JCTで渋滞が発生していた。アイドリングストップ機構があっても渋滞は嫌だし、なるべく加減速をせず一定速で走り続けたかったので、距離は伸びても渋滞を回避すべく、中央道〜八王子JCT〜圏央道〜鶴ケ島JCT〜関越道ルートを選んだ。
おかげでプジョー前橋まで、約160kmの高速区間燃費は25km/Lをキープ。一般道の信号待ちで少しロスし、ショールームに着いた時は24.3km/Lとなったが、JC08モード燃費を大幅に上回る実用燃費が得られることがわかった。ここで昼食に名物の「鳥めし」を食べながら後半のルートを確認した。ただし、前橋から先は谷川岳に向かって延々上りが続く関越道なので、エコランの技術を問われるのはココから先だ。
308 SW、508 SWともにJC08モードを大きく超えた
iコクピットのインパネ中央に平均燃費を表示し、センターコンソールの7インチディスプレイには瞬間燃費を表示させる。瞬間燃費は道路の傾斜により10km/L台にまで落ち込むこともあるが、平坦路で加速し、登りは速度低下をなるべく少なくするペダル操作を心掛けると、20km/L台がキープできた。心配した湯沢石打IC後の山道もロス少なく走れたので、初日は22.2km/Lの平均燃費でフィニッシュ。JC08モード燃費を2.1km/L上回ったわけだ。
2日目は508 SW GT BlueHDi。308と同じ2Lディーゼルをより重いボディに積むが、最大トルクが400Nmと超強力なので動力性能面での差はそれほど大きくない。ちなみにJC08モード燃費はセダン/SWともに18km/Lだ。
燃費だけが魅力ではなくクルマとしての総合力もハイレベル
2日目は東京に向けておおむね下り勾配だが、最初に千曲川沿いの道の駅で10kg以上の農産品を購入/搭載するというミッションが課せられていたので、国道117を長野方面に進み、豊田飯山ICから上信越道に乗る。
この区間は微妙にアップダウンが多く、平均燃費もあまり伸びず17km/L台で終始した。軽井沢から先は関越道に戻ってからも下りが多く、都内に戻るまでに20.4km/Lまで回復できたが、やはり初日の308と比べると508は車重が重く、走行抵抗も大きいようで、速度を維持するのが難しい印象だ。
ゴール直前の交差点渋滞でコンマ4km/Lのロスを喫し、復路平均燃費は20km/Lジャストという結果に。まあ、それでもJC08モードを2km/Lも超えたのだから、プジョーが満を持して導入したクリーンディーゼルエンジンの実力はかなりのものと言えそうだ。
(文:石川芳雄/写真:永元秀和・協力:新潟県十日町市)