画像: 白いボディが最高出力180psのディーゼルエンジンを搭載するジャガーFペース 20d プレステージ。赤いボディは最高出力340psの3リッターV6ガソリンエンジンを搭載するジャガーFペース 35t Rスポーツだ。

白いボディが最高出力180psのディーゼルエンジンを搭載するジャガーFペース 20d プレステージ。赤いボディは最高出力340psの3リッターV6ガソリンエンジンを搭載するジャガーFペース 35t Rスポーツだ。

“さすが”と思わせる走りを堪能

これまでの常識から言えば、ジャガーに「SUVとディーゼル」というのは“なし”である。しかし、驚くなかれ、この組み合わせは実にジャガーらしい仕上がりを見せていたのだった。(文:渡辺敏史/写真:永元秀和)

画像: 20d プレステージの車重は1920kgあるが、最大トルク430Nmのディーゼルで必要にして十分な走りを見せる。

20d プレステージの車重は1920kgあるが、最大トルク430Nmのディーゼルで必要にして十分な走りを見せる。

かつては色や形状の流行には周期があると言われていたクルマの世界も、今や嗜好は平滑化し、型にはまった模範解答は見当たらない。
そんな中、強いてこれを押さえておけば間違いないと思わしき売れ筋といえばSUVということになる。かつてはスタイリッシュなパーソナルクーペが持て囃され、趣味性と日常性を兼ね備えるステーションワゴンが大人気となった。いずれも充実したライフスタイルの表現手段として支持されたが、現在のSUVはそれらの美点を両取りする存在となっているだけに、人気はやすやすとは収まらない。しかもそれは局地的ではなく世界的な支持でもある。二輪駆動を前提としたクロスオーバー系も含めると、2020年には世界で販売されるクルマの4台に1台がSUVいう試算もあるほどだ。
その勝ち馬に乗るか否かは、当然企業のポートフォリオに直結する話でもある。ベントレーも、ランボルギーニも、ロールスロイスも、みんなこぞってSUVとあらば、そこに抗えるのは、もはやフェラーリやマクラーレンなどのF1直結ブランドのみかもしれない。
そんな時代……だからとはいえ、ジャガーがSUVに参入してくることにはわずかな違和感もある。何より敵は身内。ランドローバーだ。可能な限りカニバることを避けるためのコンセプトワークも相当に難航しただろう。事実、タタの傘下となった08年から噂になり、13年のフランクフルトショーでほぼ実物に近いコンセプトカーを発表……と、発売までの道のりは決して短いものではなかった。紆余曲折の末に導き出したジャガーの回答は果たしてどんなものだったのだろうか。

画像: センターコンソール部が高く設定されていることもあり、まるでスポーツカーのようなコクピット感覚だ。

センターコンソール部が高く設定されていることもあり、まるでスポーツカーのようなコクピット感覚だ。

車格としてはプレミアムSUVの真ん中を押さえたという感じ

FペースのプラットフォームはXE/XF系の新しいアルミモジュールで、マグネシウムなどの材料置換も積極的に施すなど、軽量化への執念は並ならぬものがある。ホワイトボディの重量は298kg。これはCセグメント級のSUVと大差ない数字である。というと、Fペースのセグメントは果たしてどこにあるのかが気になるだろう。価格的、ラインナップ的にみて、最も近しいライバルとして挙げられるのはメルセデスのGLCやBMWのX3などだろうか。ただしジャガーの側はポルシェマカンを強く意識しているようだ。
ちなみにサイズを見ると全長4740mm、全幅1935mm、全高1665mm、ホイールベースは2875mmと、BMWになぞらえればX3に対してひと回り大きく、X5よりは小さい。モデルをやすやすと増やせないジャガーとしては、まず車格的にプレミアムSUVの真ん中を押さえることが重要と考えたのだろう。V型エンジン搭載に加え、デザイン性の面からも大径幅広タイヤの採用は当然考えられていただろうから、切れ角を確保する意味でも車幅が広くなるのは致し方ない。もとよりユーザーを獲ったもの勝ちのSUVカテゴリーにおいては、従来の車格的セグメンテーションを当てはめること自体が意味をなさないのだろう。

画像: まるで獲物を狙い今にも走り出しそうなネコ科の動物のようで、いかにもジャガーというスタイリングだ。

まるで獲物を狙い今にも走り出しそうなネコ科の動物のようで、いかにもジャガーというスタイリングだ。

日本仕様のFペースはガソリン2種、ディーゼル1種の計3種類のパワートレーンで、ピュア、プレステージ、Rスポーツという3つのトリムラインが用意される。駆動方式は4WDで、通常はほぼ0:100のFR状態で状況に応じて最大で50%のトルクをフロント側に振り分けるオンデマンド式を採用。トランスミッションはすべてのグレードでZFの8速ATが組み合わせられる。
乗り込んでみて、いきなり残念な印象を抱いたのは内装だ。かねてからのブランドイメージや、満を持して……の期待感から相応の妄想が膨らんでいた身に、それはちょっぴり寂しいものだった。品質水準としてはXEと大差はないといったところで、もう少し豪奢な化粧を施してもよかったのではないかと思う。パッケージそのものは車格を鑑みれば及第点といったところで、立ち気味に置かれたAピラーなどもあって前方視界は悪くないし、座面や背もたれの角度設定もナチュラルな後席の着座感にも不満はない。(この続きはMotor Magazine 9月号で)

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