ふんわり優雅に…土煙を巻き上げながら疾走!
そもそも世界限定1615台という段階で「なんでそんな希少なクルマが目の前にあるのだろう…」という素朴な、ちょっと緊張感を伴った、疑問が沸き起こります。さらにラリーという思い切りタフなコンペティションで勝つために生まれた…と聞けば、ファンとしてはすっかり「神」なのです。
往時の「SL」(3代目)の血統を継ぐ以上、本来はラグジャリーカーの範疇に入るはず。ましてや2シーターの「SL」に対して4シーターとして「SLC」を名乗るのです。グラベルロードでブイブイ、ズリズリいわしている場合じゃないような気がします。しかし確かに、土煙を上げながら南アメリカの未開の道や雪道を激走する映像が、しっかり残っていました。1978年のラリー。優勝した様子です。一瞬、フロントガラスがゲソゲソのビニールでしたが。
トランクリッド部には、ささやかながらちょっとだけ勇ましいリヤスポイラーをインテグレーテッド。とはいえ、パっと見た印象は、やはりプレミアムクーペの威圧感と重厚感が圧倒的に強調されたものです。各部のメッキ使いのセンスなどは、とってつけた感がぬぐいきれない最近のモデルたちとは、ひと味違っているように思えます。
タフなラリーも旧車とのお付き合いも、メカニック次第か?
V8エンジンなどのパワートレーン系のメンテナンスももちろんですが、上級クーペとしての質感や、安心して使うための装備系のコンディションに至るまで、こうした「特別な」クルマを愛で続けるためには、相応の覚悟とともに頼りになるプロショップのサポートはやはり欠かせません。
『ベンツオート』の田中幸の準社長は、このSLCが現役だった頃からメルセデスと付き合ってきた、エキスパートのひとり。70〜80年代の「よき時代」を知り尽くした職人ならではのテクニックは、それ自体が貴重なものになりつつあります。この世代の名車たちを「少々遅ればせながら」でも付き合っていくためには、そんな職人さんたちとのコネクションは不可欠。「愛し方」ってホント、いろいろあるもんなんですね。