先代GLKは高いオフロード性能を持っていた
2008年にGクラス、ML、GLに続くメルセデス4番目のSUVとしてデビューしたGLKは、3.5ℓV6エンジン+4マティックがもたらす力強い走りと高いオフロード性能など万能な魅力を備えていた。ただこのGLK、左ハンドル仕様のみしか日本へ導入されなかったことやラインナップが価格600万円超の1モデルしかなかったこともありメルセデスのSUVとしては、いまひとつ販売が伸び悩んでいた。
そんなGLKが第二世代にフルモデルチェンジした。この新しいSUVには、メルセデスの新ネーミング方式に則り、SUVを表すGLとクラスを表すCが組み合わされた「GLC」という名前が与えられている。最初はこの耳慣れないモデル名に戸惑いさえ覚えていたが、ここ半年ぐらいでそれもすっかり慣れた。要はSUVにもCとEとSがあるということである(Gクラスのみ別格!)。
ちなみにGLCは、先代GLKのボディサイズより全長が110mm長く、全幅が50mm広く、全高が25mm低くなった。またCd値は0.31と優秀で、この効果で風切り音の低減と燃費の向上に貢献しているという。
Cクラスとの繫がりを強く意識させる新SUV
搭載された安全技術も特筆ポイントである。全モデルに標準装備されるレーダーセーフティパッケージをはじめとする最新の安全運転支援システムは、カメラとミリ波レーダーにより車両の周囲360度をカバーする万全の安全性を確保している。
ラゲッジルームは、GLKよりも100リットル拡大した550リットル(VDA値)を確保する。これはCクラスステーションワゴンより60リットル大きく、さらに3分割可倒式の後席を倒せば最大1600リットルにまで拡大することができる。自動開閉テールゲートも標準装備されるのでとても便利だ。
フットワークは軽快。乗り心地も快適
試乗したのは、GLC250 4マティック スポーツの本革仕様。パノラミックスライディングルーフやブルメスターサラウンドサウンドシステムなどが標準で装備された豪華版で価格は745万円。オプションはボディカラーのイリジウムシルバー(8万8000円)と、アクセサリーのランニングボード(12万円)が装備され、それらを含んだ合計金額は765万8000円である。
運転席に乗り込むとそこから見えるインテリアはメルセデス流の高級感が演出されていた。そして視界は少し高くSUVらしいものである。さて、エンジンに火を入れ走り出そう。少し右足に力を入れるだけで、すっと動き出す。そこに荒々しさはいっさい感じられずスムーズな走り出しである。
そしてそのまま速度を乗せていくとエンジン音の高鳴りとともに軽快なフットワークを見せる。わずか 1200 rpmで発生する最大トルクの威力は低回転域を多用する市街地で大いに感じられた。
4フロント4リンク、リアマルチリンクというCクラスと同様のサスペンションを完璧に使いこなしているあたりもさすがだ。途中、道路工事などで舗装の荒れた路面や段差があったがそれを少ない衝撃で乗り越え、その衝撃さえもすぐに収束するしなやかな乗り心地である。走行性能に不満を感じることは最後までなかった。ただし最小回転半径は5.7mなのでCクラスから乗り換えると、意外と小回りが効かないと思う人はいるかもしれない。ちなみに4マティックはエンジントルクを前33%、後67%の基本比率で配分する。
ディーゼルエンジン搭載車が欲しい
価格はベーシックなGLC250で628万円。先代GLK350の611万円より少し高くなったが右ハンドル仕様、安全運転支援システムや装備内容の充実などを見ると満足できるものである。このGLCは、多くの人に注目され確実に販売台数を伸ばすはずだ。CクラスのSUVというイメージ戦略も成功だろう。
ただラインナップはもう少し増やしてほしい。動力性能に不満はないと書いたが、それでも 2リッター直4ターボエンジンしか選べないのは残念。とくにC220dの素晴らしさを知ってしまった今、それに積まれる2.2リッターディーゼルターボはぜひ導入してほしい。これに9Gロトニックや4マティックが組み合わされれば、かなり魅力的だと思うのだがいかがだろうか。本国ではGLCに220d や250dの4マティックもラインナップしている。それらの日本導入を大いに期待したい。(文:千葉知充/写真:永元秀和)