撮影 / 柴田直行 本文 / GOGGLE編集部(モーターマガジン)
デジタル編集 / Akiko Koda@ロレンス編集部
どんな時でも満足&カッコいい。
それ以上のオートバイって必要?
カワサキが先代となるニンジャ250Rをリリースしたのが2008年。そのころ日本のオートバイの市場はほとんどが大排気量車メインで、400cc以下のオートバイは、あまり人気のないクラスで「大排気量にあらずんばオートバイにあらず」といったような風潮すら感じていた。
そこに投入された250ccのフルカウルスポーツは、まさに衝撃だった。このオートバイは、みんなが忘れかけていた本質を思い出させてくれたのだ。パワーがあるのが偉い、じゃない。コンパクトで軽くて、走ることそのものが楽しい。オートバイは走ってナンボ。そんな単純なことを、誰もが再認識したのだった。

全長×全幅×全高 2,020mm×715mm×1,110mm
軸間距離 1,410mm
最低地上高 140mm
シート高 785mm
エンジン 水冷4ストローク並列2気筒 / DOHC4バルブ
総排気量 248cm³
最高出力 23kW(31PS)/11,000rpm
最大トルク 21N・m(2.1kgf・m)/8,500rpm
そこにまず、敏感に反応したのは、 次の世代を担う若いオートバイ乗りたちだった。彼らはニンジャ250Rを「新しいモノ」として感じ、いち早く飛びついた。熟年のライダーたちにとっては、通り過ぎてきた過去のような存在だった250ccスポーツも、そんな昔のことを知らない若いライダーにとっては関係ない。
ニンジャ250に乗って思った「オートバイ、やっぱり大好き!」
価格も現実的で、オートバイが好きという自分を表現できるオートバイがニンジャ250Rだったのだ。そして2013年には現行モデルに進化。この進化がまたもや衝撃的で、ニンジャ250は大排気量車も 真っ青の鋭いスタイリングを手に入れ、とんでもなく「カッコいい」オ ートバイになってしまった。これではさすがに、それまで所詮250ccと侮っていた熟練のライダーたちも無視できない。
250cc とは思えない、こだわりのディテール
1. 軽快な走りを予感させる 10 本スポークのホイールに、ライムグリーンのリムラインがアクセントとして効いている。ブレーキはコントロール性重視。フロントサスが柔らかいので、街乗りやツーリングも快適だ。
2. デザインされたマフラーの存在感も抜群。マフラー交換の必要を感じないほどに完成されている。
3. スポーティなシートだけれども、長時間のライディングで もお尻が痛くなりにくいのが驚き。タンデムも快適にできるが、カッコよさ 重視ならばオプションのシングルシートカバー(8921 円)をおすすめしたい。
先代モデルのころから走りが楽しく、ツーリングも充分に楽しめて、毎日の通勤にだって使えて、しかも経済的。そう言われていたオートバイが、恐るべきカッコ良さを装備したのだ。そして、若者たちだけではない、数多くのライダーたちが、ニンジャ250の虜になったのだ。でもこれは必然というべきだろう。小柄な女の子でも安心して扱える車体を、男性が扱えば当たり前だけど 余裕の極み。
785mmのシート高で身長 161cmの女性ライダーでもきちんと両足が接地して安心感はたっぷり。軽い前傾のライディングポジションなので、スポーティな走りにも対応できる。
785mmのシート高で身長 161cmの女性ライダーでもきちんと両足が接地して安心感はたっぷり。軽い前傾のライディングポジションなので、スポーティな走りにも対応できる。
都会のラッシュアワーをコンパクトな車体で俊敏に駆け抜け、フルカウルならではの防風性能を活かしての快適性も充分以上。ライディングポジションだって厳しい前傾姿勢を要求されたりはしない。
本当の意味で「いつでもどこでも」 オートバイで走ることが楽しめて、この1台でオートバイ趣味のほとんどが満足できるのだ。これで人気が出ないほうがおかしいだろう。
得てして、何でもできるオートバイというのは、そのバランスの良さゆえに「個性がない」なんて言われがちなものだけれど、そこも、ニンジャ250は違った。先に書いた、 突き抜けたカッコ良さ。それがこのオートバイの個性になっていたのだ。
みんなやっぱり、カッコいいオートバイが大好き!この本質だけは、世代も性別も関係ないってことだ。
カッコ良くて万能だった。でも本当の魅力は「走り」にある!
一躍、250ccクラスのベストセラーにのし上がったニンジャ250。
それはすごくカッコ良くて、快適で、気軽に乗れるオートバイだったのだけれど、それだけじゃボクたち「ライダー」という超ワガママな人種は納得しない。だって、ボクらは「便利」だからオートバイに乗っている訳じゃないのだ。オートバイが好きだから、それで走るのが楽しいから大好き。これだけは、ライダーみんなにご賛同を頂けることだろう。
その走りの楽しさ。これがまた新鮮だった。現行モデルで55万円強のプライス。これだって決して安くは無いけれど、200万円オーバーのオートバイだって当たり前のように存在する昨今のバイク事情の中では、かなり身近な存在と言っていい。だから当然、という訳じゃないけれど、ニンジャ250には煌めく高級車たちのようにラジアルマウントされたブレンボ製ブレーキもついていなければ、乗り心地と安定感を自在にコントロールする凄まじい電子制御サスペンションだってついていない。
カワサキの上級モデルには搭載されているトラクションコントロールだって無いのだ。それでも、このオートバイを走らせたことがあるライダーは、すべからくこう思ったことだろう。
「なんて楽しいオートバイだ」と。
何度乗っても新しい発見があるやっぱりニンジャはスポーツだ!

もはや電子制御ナシでは扱えないモンスター系のパワーは無い。最高出力にしてたったの31馬力。でも、だからこそ、ライダーは全力でニンジャ250を走らせることができた。ハイパワー車では恐ろしくて挑戦する気にもならない、コーナーの出口に向けてスロットルを全開にする面白さ。それをすべてのコーナーで味わうことができたのだ。
その時、しなやかなリアのサスペンションとタイヤはグッと路面を捉えて車体を安定させ、ライダーに自信を与えてくれる。フロント側のサスペンションは街乗りも考慮してすこし柔らかめなので、そこは乗り手がブレーキで 車体姿勢をコントロール。ブレーキ自体の制動力だってシングルディスクだけど、パワーに対して考えれば充分。不足を感じることはない。
要するに単純な話で、走りがエキサイティングなのだ。それは決して同社のZXRのように速くはないけれど、ライダーはそれぞれ自分なりのペースで「スポーツ」を満喫できる。補足として言うと、サーキ ットでニンジャ250を楽しんでいる上級者は「250ってこんなに速いの 」と思わせるスピードでコーナリングしているし、最高速だって日本の公道の制限速度を軽く上回るパワーは備えている。だから、ニンジャ250は遅いという訳でもない。余すところなくエンジンを味わえて、軽い車体がクルリと曲がる。
それぞれのライダーにとって、それぞれのスポーツを楽しませてくれるのがニンジャ250というオートバイ。 こういうオートバイを作り出せるカワサキというメーカーは、本当にすごいと思う。ユーザーと二人三脚で歩んできた歴史こそが、彼らの底力なのだ。そうして初代の登場から8年。今なお、小排気量の王として、ニンジャ250は輝き続けている。





