オリジナルの雰囲気・スタイルを生かしながら、性能アップを目指し、Z2のカスタム企画がスタート。厚木の有名バイクショップ ブライトロジックの協力のもと、今回は足回りを中心とした性能と安全性の向上を目指す。

完成したZIIが戻ってきた

雨の降る土曜日。2016年1月30日。
(前日までは雪になるかもと思われたが)日中降り続けた冷たい雨は、夕方暗くなる頃には止んでいた。そして、ZIIは戻って来た。厚木まで取りに向かうつもりだったのだが、ブライトロジック 竹中代表が自ら届けてくださったのだ。

久しぶりの愛車に心が逸ったが、路面が濡れた状態、まして夜にはなるべくオートバイに乗らないようにしているので、軽く10分ほど走らせてから、すぐに駐輪場に仕舞い、試運転は翌日に行うことにした・・・。

画像: 足回りを中心に生まれ変わったZII

足回りを中心に生まれ変わったZII

現代的な走りを手に入れた、”新しい”KAWASAKI 750RS ZII。

そして翌日。
ランチがてらの試運転を行った。海岸通りで品川から鮫洲を抜け、大森を回り、国道15号で御殿山から大崎を回って、白金高輪経由で麻布十番、そしてまた品川方面、という短いコースだ。

まず、ホイールを変えて車重が少し軽くなったことで、押し歩きが楽になるかと思っていたのだが、これは全くというほど変わった気がしなかった(笑)。より巨体に感じるXJR1300のほうが軽かったほどだ。さすがはZII、鉄の塊w。

走り出すと、今度は軽さを感じた(!)そして、スゥッとまっすぐ走る、その素直な直進性に驚きを感じた。
キャストホイール化、最新のタイヤへ変更、バックステップ化と、足回りの大幅な変更を行ったのだから当たり前なのだが、全体的にカチッとして、振動が少なくなったので、非常に乗りやすく軽々と走るようになったのである。ポジションは、バックステップによって、より前かがみになったのだが、これが僕には実に正解であったようで、ハンドルに余計な荷重をかけることもないし、柔らかくスロットルを操作できるようになったと思う。

また、軽さといえば、ブレーキにしてもクラッチにしても、ノーマルのレバーの重さは完全に解消され、ほとんど力を入れずに扱うことができるようになった。ブレーキは(僕は人差し指と中指の二本掛けだが)軽く引けば軽く効き、ぐっと握ればそれだけ綺麗に速度を落としてくれる。フルブレーキをしても、リアブレーキで加減をして過度にフロントが沈み込まないようにしてやれば、今までとは比較にならないほど、安全かつ早く停まってくれる。この変化は、旧車乗りにはなかなか得がたい安心感を生んでくれる。止まってくれるからこそ、スロットルを開けることができるからだ。
(あ、確かにリアブレーキ、効かなくなっていた。レバーを短くしたので、レバレッジがきかなくなったためだ。まぁ、特に問題ないけれど)

さらにすごいのはクラッチの軽さで、これが低速域では実にありがたく感じた。ロングツーリングであれば、さらに有り難みは増すだろう。握力をほぼ必要としないレバータッチの軽さは、 乗りやすさ という性能を最大限に向上させてくれたと言っていいだろう。

前傾姿勢になり、クラッチの軽さで ギアチェンジもよりスムーズ。制動力への不満はなくなり、キャストホイール+最新タイヤによって車体の安定感が上がった。今まではレーンチェンジにしてもコーナーへの進入時の荷重移動のきっかけにしても、ゆっくり静かに(?)に行っていたものが、安定度の向上によって、今まで以上にクイックな挙動を与えても、しっかり着いてくる。現代のバイクでなら当たり前の動きが、新しいZにも備わっている、と思えた。

旧車だから不安を感じても仕方ないし、その不安と共に生きていくことで、無理をしない。
それがZIIとのつきあい方と思っていたが、ブライトロジックによって生まれ変わったZIIは、現代(いま)のバイクと同じように向き合って乗っていける、そう思えるようになったのだ。

画像: ブライトロジックのロゴ(ステッカー)がサイドカバーに飾られた。

ブライトロジックのロゴ(ステッカー)がサイドカバーに飾られた。

画像: ぱっと見でこのバイクを、40年以上前の製品と思う人は少ないだろう。今のバイク、と思わせる普遍的な見た目になった。

ぱっと見でこのバイクを、40年以上前の製品と思う人は少ないだろう。今のバイク、と思わせる普遍的な見た目になった。

最新バイクたちの違い

ところで、久しぶりに愛車に乗って思ったことは「あれ、こんな音 うるさかったかな??」ということ(笑)。
今回オイル漏れの修理はしてもらったものの、エンジンはいじっていないし、吸排気系も触っていないので、何も変わりはないのだが。
これは恐らく、僕がここ最近 XJR1300やMT-03といった最新バイクの乗り味を知ったせいなのだろう。ZIIの走りの感覚が 現代のバイクのそれに近くなった、と書いたばかりだが、もちろん違いは大きい、ということだ。

現代のバイクたちは実に穏やかだし、近所に騒音を気にする必要がない。走っていても静かなものだ。空冷Zの荒々しいというか粗くてガサガサしたサウンドは、彼らと比べればよく言えば野生的、悪く言えば洗練されていない、というところだ。ま、それが僕は好きなんだけどね。

さらに、走りそのものでも違うのは、この1年で試乗した、ハーレーダビッドソン(Forty-Eight、IRON883)、Ducati スクランブラー、YAMAHA トリシティ、BOLT、SR400、XJR1300、MT-03らがおしなべて 足回りが非常に軽く、ちょっとしたきっかけで綺麗にリーンするし、レーンチェンジもクイッという切れ味を見せていたのに対して、カスタムされたZIIではあっても、そこは非常に鈍重だということだ。
今回のカスタムで同じような動きを手に入れられたりして、と密かに期待していた僕だが、そこは残念、やはり40年の隔たりはそう簡単に越えられるものではなかった(苦笑)。そもそもフロント19インチ・リア18インチという古臭いレイアウトを変えないままに行ったカスタムであるし、これはフロント18インチ、もしくは17インチでラジアルタイヤを履かせてみないと変わらないということかもしれない。

今の新車たちが、くいッくいッと曲がり、シュッと軽く切れるように傾くの対して、ZIIのそれはとても重い。ひらひらと曲がる、と評されるZだが、僕には現代のバイクたちの挙動の切れ味と比べると、とても鈍重に感じる。

ただ、それが嫌かというと、実はそうでもない。
XJRを試乗したときに、

と、書いたが、実際、今日の試運転では、XJRを始めとする現代のバイクの足回り(と、もちろんそのハイパワー)に、カスタムをしても追いつかない差を感じることにはなった。

そうなのだが、その鈍重さは、ZIIの昔ながらの味わいのように思うし、公道を走る上で何か心配であったり不安であったりということは全くない。むしろ、その鈍さを分かった上で走らせることで、ZIIの楽しさが生まれるようにも思うのだ。どうせ、何をしたところで現代のバイクに速さで勝てるわけもないのだし。

カスタムされたZIIは、決して現代の最新バイクと同じようではない。むしろ、旧車ならではの鈍重さと粗々しさを残しながらも、現代の交通状況の中でも不安なく楽しく走ることができる性能を持った、現役のモーターサイクル、なのである。

それこそ、今回のカスタムで僕が求めた、ZIIのあるべき姿なのだ。

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