外国メーカーが主導しはじめたモーターサイクルカスタム文化。このトレンドに追随している日本メーカーは現状YAMAHAだけだ。
海外ではカフェレーサースタイルを中心としたカスタムブームが続いているが、そのベースとなるのは主に旧車。ただ、カスタムベースとしての車両を提供することで、この新しいモーターサイクル文化の普及をアシストしようと考えるメーカーも多くなってきた。BMWならばR nineT、ハーレーならSTREET®のように、カスタムされることを前提として、メーカー自身がカスタム愛好者たちを鼓舞するような製品をリリースしているのだ。
しかし、この潮流にコミットしている日本車メーカーは、今のところYAMAHAだけだ(それもYAMAHA EUROPE主導のようだ)。特に、空冷ビッグマルチ・ネイキッドの頂点として、20年という長きに渡って生き抜いてきたXJRは、古き良き時代を彷彿させるスタイリングを持ちながら、性能と安全性を担保できる素晴らしいカスタム素材として、多くのカスタムビルダーの心をつかんでいる!
これぞオートバイ、と感じさせる普遍的な魅力を持つXJR
待ち望んだXJR1300との邂逅。
僕が普段乗っているのはKAWASAKI 750RS、いわゆるZIIだ。ZIIもまた、750ccという排気量に比べると大柄なマシンであるが、このXJRの雄大な車格には乗る前はとにかく圧倒される。実際にサイズだけ見てみると、ZIIのほうがやや大きいのだが、タンクの大きさやボリューム感などが、肌感覚として、よりマッチョな迫力を感じるのだ。
ZIIは、全長x全幅x全高 2,200mm x 865mm x 1,170mm。
XJR1300は、全長x全幅x全高 2,175mm×765mm×1,115mm
ロレンスを立ち上げて一年、いろいろなオートバイの実車レビューをしてきたが、このXJRはZIIと同じ空冷4気筒ネイキッド。それだけに、ZIIとの比較対象によってこのバイクを判断してしまうのだが、基本的なパッケージとしては同じ系統であるがゆえに、なおさらその進化の凄さを実感する。
見た目は巨大なバイクだが、乗ってしまえば取り回しは軽い。Uターンも軽々だ。
パワーバンドが広くて、ギアチェンジをこまめに行わなくてもスイスイと車の流れから飛び出すことができるので、実に扱いやすい。巨体ながら、切り返しも軽く、レーンチェンジも早い。わずかなきっかけでスルスルっとリーンしはじめるので、タイトなコーナーもとても楽だ。ブレーキの効きも、素晴らしく破綻する気がしない。
普通にストリートを流すだけの走りだからこそはっきりとわかる違いがあって、愛してやまないZIIが(当たり前のことだが)古いバイクなのだと実感せざるをえない。
もちろんZIIが色褪せる、ということはないし、そもそも現代のテクノロジーで組まれた最新バイクと、40年前のクラシックバイクを比べること自体が間違っていることはわかっているが、近い形をしているからこそ、その違いを明確に感じる。だって、バイクに興味のない人が見てたら、どちらが古いバイクなのか、すぐには判断つかないだろうし、どっちが速いかだってわからないはずだからだ。
XJRの100馬力というピークパワーは、1300ccという大排気量からすれば、例えば同じ排気量のYAMAHA車 FJR1300が147馬力、900ccのMT-09が110馬力であることをみても、特筆するほどパワフルなわけではない。しかし、250Kg近い巨体をやすやすとスピードに乗せていく、十分すぎるほどのパワーでもある。
サーキットを走るというのなら別かもしれないが、街を駆け、高速道路での移動を快適に行っていくには、これ以上の性能は要らない、そう思える。逆に言うと、サーキットでしか本来の性能を発揮できないスーパーバイクたちがいる中で、ストリートで存在感を発揮し、十二分の性能を持っているオートバイ、という選択ならば、このXJRは筆頭における傑作ではないか、そう思う。
ただ、とにかく大きなバイクが欲しい!というのでなければ、(KawasakiのDAEGにも感じるが)クラシックなパッケージ・スタイリングのモーターサイクルには、750 - 900ccくらいがちょうどいいのではないか、という気もしている。XJR750もしくはXJR900があれば、よりセールスにつながるような気がするのだが、みなさんはどう思うだろう??
本格的なレビューは次回
さて。今日の走りはお見合いのようなもの。
まだまだお互いのことが分かり合っていない。
次回はもう少し走り込んで、XJRの魅力についてより深く探っていこう。
また、他のメンバーからも「早く乗せてくれ」という声が上がっているので、乗り手によって違う印象も出てくるやもしれないし、オーナーの方々の寄稿も待ってみたいと思う。