リスクを恐れず、世間の風当たりにもひるまず、信念をもって前に進む男たち。同時に、ストイックなだけでなく、人生を楽しみ 快活に笑い、欲望や野心を隠さないが爽やかさを失わないイイ男たち。彼らをロレンスMENと呼び、不定期に紹介していく。

一度でも起業を夢見たことがある者なら、彼の名を知らないはずがない。スティーブ・ジョブズ亡き後、世界中の、一攫千金を夢見る野心家や、世界を少しでもよくしたいと願う理想家たちが、かくありたい、と憧れる存在。それがイーロン・マスクだ。

同時に複数の巨大ベンチャーを経営する現代の”聖徳太子”

画像: イーロン・マスク(Elon Musk, 1971年6月28日 - )は、南アフリカ共和国・プレトリア出身のアメリカの起業家であり、スペースX社の共同設立者およびCEOである。 PayPal社の前身であるX.com社を1999年に設立した人物でもある。 ja.wikipedia.org

イーロン・マスク(Elon Musk, 1971年6月28日 - )は、南アフリカ共和国・プレトリア出身のアメリカの起業家であり、スペースX社の共同設立者およびCEOである。
PayPal社の前身であるX.com社を1999年に設立した人物でもある。

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彼の略歴をおさらいしてみよう。

1999年にはオンライン金融サービスと電子メールによる支払いサービスを行うX.com社の共同設立者となる。X.com社は1年後にコンフィニティ社(と合併し、これが2001年にPayPal社となる。
2002年に3つ目の会社として、宇宙輸送を可能にするロケットを製造開発するスペースX社を起業し、CEOならびにCTOに就任している。また電気自動車会社であるテスラモーターズ社に投資し、同社の最初のモデル「0001」を自ら所有する。2008年10月には同社の会長兼CEOに就任した。
2006年には太陽光発電会社ソーラーシティを従兄弟であるリンドン・リーブと共同で立ち上げ同社の会長に就任した。2013年には時速約800マイル(約1287キロ)の輸送機関ハイパーループ構想を明らかにした。2014年9月に来日し安倍晋三首相と会談した。なお今回来日した際にラーメン二郎新宿歌舞伎町店に立ち寄った事がTwitterで話題になった。
マスクの資産は、2005年時点において3億2,800万ドルとされていたが、2014年7月時点では110億ドルとされている

つまり、彼は現在PayPalで得た資産をつぎ込み、ロケット開発のスペースX、電気自動車開発のテスラ、太陽光発電開発のソーラーシティと、3つのベンチャーを経営している。ひとつだけでも尋常ならぬストレスとプレッシャーがかかると思うが、彼はさらに新しいプロジェクトにまで手を広げようとしている。まさしく超人だ。

シンプルな発想とずば抜けた啓蒙手腕

イーロン・マスクの凄みは、次から次へと資産をつぎ込み、ベンチャーを立ち上げる速度と、それらをすべて把握するマネージメント能力の高さにあるが、起業や投資をする背景を説明するときは、実に鮮やかにシンプルに、その意義を周囲に伝えるコミュニケーション能力にも驚愕させられる。

テスラという会社をみなさんはどのくらいご存じだろうか?
テスラが作っているのは電気自動車=EVだが、EVでは動力にエンジンではなくモーターを使い、リチウムイオンバッテリーを電源として使う。
通常のEVは、大容量・高品質のバッテリーを採用し、一台のクルマに乗せるバッテリーの数をなるべく少なくする発想で設計されている。数が少なければ品質確保しやすいし、生産効率も良くなる。
ところが(初期の)テスラのEVは、小さいバッテリーを大量に組み合わせるという、常識とは真逆のパッケージを採用した。縦に99個(=直列)x 横に69行(=並列)=6831本という形式だ。
大きなバッテリーを採用すれば、それ自体の品質管理に時間を割くことができる。バッテリーは性能を向上させる=大容量にすればするほど、破裂/爆発するリスクが出てくるので、これを抑えることに大きな開発コストと時間をかけなければならない。日本では自動車メーカーと電機メーカーあるいは電池メーカーが共同で開発するスタイルが主流であり、どうしも高性能バッテリーの開発に目がいく。
しかし、小さなバッテリーをたくさん組み合わせれば、一個一個の電気の貯蓄量が少ないので爆発するリスクは軽微になります。仮に一つのバッテリーに異常がきたしたとしても、その熱暴走が他のバッテリーに影響を及ぼさないように、連鎖反応を制御することができれば、損傷は69分の1に過ぎず、全体の性能にはあまり影響が出ないことになる。このバッテリーの構造は、ノートパソコンの熱制御の技術から生まれたとテスラは言っている。

例えば、テスラという電気自動車の会社に投資している理由は、地球温暖化を遅らせるためだという。モーターで駆動する電気自動車を動かすエネルギーは、幾つかの中央集約型の発電所によって発電される。これに対して内燃機関であるエンジンを持つ車は、個々にエネルギーを発生させている。イーロン・マスクによると、中央集約型の発電所によるエネルギー生成のほうが、無数の内燃機関によるエネルギー生成の総数よりも、20%以上効率がよいのだそうだ。

つまり、エネルギーの生成コストを20%下げる、というのがテスラの社会的意義だというわけだ。

また、単に宇宙開発の民間企業というイメージが先行するスペースXは、何度か再利用できるロケットの開発、というテーマがある。一般に、宇宙ロケットは一回の打ち上げで使い切りであり、恐ろしくコストが高い代物だ。
なぜ一回しか使えないのかというと、ロケットはミサイルみたいなもので、打ち上げたあとに着陸できないので、落ちるしかないからだ。

イーロン・マスクはここに目をつけた。打ち上げたあとに、着陸できる仕組みを作ればロケットは再利用できる。仮にいままで一回しか使えなかったロケットを2回使えるようにするだけで、コストは半分になる。十回使えれば10分の1だ。そうなれば安価で有人ロケットを作って、誰でも参加できる宇宙旅行を実現できるかもしれない。イーロン・マスクはそう考えたわけだ。

飛び立って、また着地する実験を繰り返してきたスペースX

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いつかは地球を飛び出して、移住可能なスペースコロニーを作ろう

イーロン・マスクの挑戦にはすべて一貫した目的、テーマがある。
それは地球全体のエネルギー消費を抑えるか、多様性を高め、温暖化をストップさせて、少しでも長く地球の生活環境と生命体の存続を図ろうというもの。もう一つは、それだけ努力してもいつかは地球は、増え続ける人類を支えられなくなるので、地球外の惑星(マスクの想定は火星)に移住できるテクノロジーを早めに作ろう、というものだ。

荒唐無稽、空想妄想がすぎる、と嗤う人も多いかもしれないが、イーロン・マスクは本気だ。そしてその本気を社会全体に伝えて、多くの人と夢を共有して支援を取り付けることに成功している。

冒頭にスティーブ・ジョブズの後継者と書いたものの、発想の巨大さ自体は、イーロン・マスクの構想は、ジョブズどころではなく人類史上最大と言ってもいいかもしれない。

もし彼をこれまでご存じなかったとしたら、2016年はぜひ彼の動向とさまざまなプロジェクトの趨勢を見守ってもらいたい。

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