日本でも人気モデルとして定着してきたアドベンチャーモデル。中でも不動の王者といえるBMW GSシリーズは、1980年に登場したBMW R80G/Sから始まった。いまは大きなガソリンタンクとカウリングが特徴のBMW GSだが、最初のG/Sはオン・オフを問わず走ることができる、デュアルパーパスマシンのはしりともいえるモデルだった。
それ以前にもスクランブラーというオフ寄りのマシンはあったけど、これは未舗装路がまだまだ多かった時代の必要から生まれたのではないかと思う。いまあらためてBMW R80G/Sを見るとデュアルパーパスというより、ロードバイクにオフ寄りのタイヤとモトクロス用のハンドルを付け替えただけといったスタイリングだが、革新的な片持ちスイングアーム「テレレバー」を初採用するなど、大型ロードバイクで道を選ばずに走ることができるという、全く新しいコンセプトのバイクとして登場したのだ。
オン・オフを問わず走ることができるBMW R80G/Sは、1978年からはじまった究極のアドベンチャーレースともいえる、パリダカールラリーでのBMWの活躍により、BMW R80G/Sパリダカールというモデルへと派生してゆく。これがいまのアドベンチャーモデルの原型のひとつといえるだろう。
その後、GSは1000ccのR100GS(1987年)とスケールアップし、翌年には34リットルの巨大なガソリンタンクを搭載したR100GSパリダカールが登場する。いまはアドベンチャーモデルの王者として、人気モデルとなったBMW GSシリーズだが、この当時の日本では正直言って、キワものバイクと捉えられていたのだと思う。ちなみに初年度は70台程度しか輸入されなかったらしい。BMWも日本ではあまり売れないだろうと予想していたのかもしれないね。
いまは超コンサバティブなKawasaki Z1000Jに乗る私だが、実はキワもの好きでもあって、このBMW R100GSパリダカールに乗っていたことがある。バイクに乗り始めたころからオフロードにハマっていた私は、モトクロスごっこからエンデューロレースを経て、いつしかパリダカールラリーへの出場が夢となる。それは実際に某レーシングチームに所属することで、夢に近づくことになるのだが、20歳そこそこの私には資金面など、現実な壁が高すぎて実現することはなかった。そんな私にとってR100GSパリダカールは、ついえぬ夢だったパリダカールへのエントリーを手に入れるようなものだったのだ。
ヨーロッパを中心に大人気となっているアドベンチャーバイクだが、狭い日本では巨大なアドベンチャーは合わないのではと思われるかもしれない。だが、アドベンチャーほどツーリングに適したバイクは他にないと思う。ツーリングスポットまで高速道路を長く走ることもあるだろう。山が多い日本では様々なワインディングロードを走ることとなる。高いライディングポジションは変わりゆく風景を余すことなく伝えてくれる。地球を舞台に果てしない冒険を競うことを目的としたパリダカレーサーをルーツとしたマシンは、ツーリングという私たちの日常的な“冒険”の舞台にも適しているのだ。