この場を借りて告白させてもらうが、僕は数年来のTSUTAYA DISCASユーザーだ。

このことを知人に語ると「なんでまた?」と驚かれることが多い。わざわざCD/DVDを送ってもらい、鑑賞し、返却するという手間を繰り返す意味がどこにあるのか、ということのようだ。
たしかにそのとおりで、IT――いやインターネット業界にどっぷり浸かっている僕が、なぜアナログなビジネスモデルにお金を出して使っているのか、と自問することもある。ただ理由は明確で 「DVDを受けとり、返送しなければ次が届かない」 というプレッシャーを感じられるからだ。このプレッシャーが僕をして、多忙な中でもなんとか映画を見続ける=映画を趣味としてカウントできる、という状態に追い込んでくれるのだ。

受け取りは自宅ポストで、同時にほかの郵便物のチェックもできるから手間ではないし、返送も通勤途中にポストへ投函するだけだから、やはり手間ではない。ただ、返送しない限り次が届かないから、スケジュールをこなすがごとく鑑賞するのである。このプレッシャーがあるから、結果として月8本ペース(つまり 年間100本 )でDVDを鑑賞できている。 逆に言えば、いま以上のペースでDVDを鑑賞することは、僕にはほぼ不可能だ。

その僕が、TSUTAYA DISCASの退会を検討する事態に遭遇している。なぜなら、Amazonのプライム・ビデオがサービス開始となったためだ。
僕はHuluもNetflixも、dTVにも興味を示さなかった。ストリーミング動画サービスに乗り換えると、好きなときに好きなコンテンツが鑑賞できるということが仇になり、「いつでも鑑賞できるから、いつでもいいか」と考えてしまい、結果的に月8本という消費ペースが落ちそうだったからだ。
ところが、Amazonのプライム・ビデオは違う。僕はすでにAmazonプライムの会員であり、購買体験の最適化を十分に享受している。プライム・ビデオはAmazonプライム会員ならば無料――つまりTSUTAYA DISCASを続けようが退会しようが、プライム・ビデオのコンテンツを無料で楽しめるということだ。
この Amazonの戦略は、AppleのiOSにおける広告ブロックサポートのような、他社を打ち負かすための攻撃的な作戦ずっと僕はマーケティングは企業間の戦争なんだと主張し続けている)といえよう。

つまり、年間3900円という他社を圧倒する低価格で優位に立つだけでなく、Amazonプライム会員そのものを増やすことで、楽天など他社ECサイトのユーザーを切り崩せる。すでにAmazonプライム会員である場合でも、無料で高品質の動画コンテンツが得られるので、退会しようとはしないだろう。また、Amazonプライム会員でない場合は、動画コンテンツに惹かれて会員登録するユーザーも多いだろうし、即日配送などのメリットを体感すれば他社ECサイトの必要性を感じなくなるだろう。
つまり、このプライム・ビデオという戦略は、単に動画ストリーミング市場への参入という以上に、主戦場であるEC事業における優位性を強めていくための要素が強いのだ。言ってみれば、強者にしか取り得ない、横綱相撲である。(拙書『ソーシャルメディアマーケティング』では、防衛戦とという)


僕が今後どのサービスを利用するかについて話を戻すが、結論からいえば、しばらくTSUTAYA DISCASを使いつつ、プライム・ビデオを併用してみる。そして月8本ペースで動画コンテンツを鑑賞するという習慣がプライム・ビデオでも置き換えられると確信した際は、きっと乗り換えるだろう。

元記事はこちら

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.