銀河を支配する一族の争いを描いたスペースオペラ
まず感想を言うと、場面展開が粗くて、やや焦りすぎというのが一番の印象である。
父を殺されて娘=ジュピターが、ロシアから米国に移住したはいいが、親族にこき使われているシーンから始まる。ところがあまり説明もなく、いきなり銀河を支配している宇宙人たちの世界に場面が移る。これにかなり戸惑った・・。
とはいえ、『マトリックス』シリーズは世界同時上演にも駆けつけた僕だ、ウォシャウスキー監督には誰よりも期待している。とりあえず先に進めよう。
宇宙には実は無数の星があり、知的生命体は複数存在する。そしてその頂点としてすべての生命体の支配階級が存在していた。そのなかでも最もパワフルな存在がアブラサクス一族だった。
アブラサクス一族は、さらに強大な権力を得るために争っており、長兄のバレム、長女のカリーク、次男のタイタスが骨肉の争いをしていた。
DNAの数万年に一度の奇跡的な一致を、転生輪廻と呼ぶ・・・
鍵を握るのは、地球で暮らすロシア移民のジュピター(ミラ・クルス)。
よくわからないのだが、宇宙を支配しているのは人類であるのだが、それは地球に存在している人類とはDNA的には同じだが、オリジナルではないという設定だ。もともと人間は地球外で生まれ、進化して、強力な文明を作り上げた。
そのうち、宇宙で最も価値のある資源とは、 ”時間” である、との結論に行き着く。生命体における時間とはすなわち死なないこと。 オリジナルの人間 たちは、不老不死のために、細胞を活性化させ、何度でも若返らせる技術を完成させるのだが、そのためには大量の細胞が必要になる。そのために、 オリジナルの人間 は、地球を含め、多くの惑星の先住生物を絶滅させ(地球の場合は恐竜である)、人類のクローンを住まわせる・・・やがて収穫するために。(100人の人間を殺すことで1回分の長寿の薬を作ることができる)
ジュピターは別に宇宙で生まれて、たまたま地球に落とし子として生まれたわけではない。
ジュピターは、たまたま、殺されたアブラサクスの女王のDNAと完璧に一致して生まれただけだ。
この作品では、DNAが重要な要素として物語の軸に置かれており、長い年月の間に全く同じDNAを持つ人間が生まれる奇跡をもって、転生輪廻としているのだ。
アプラサクス一族に牙を剥き、ジュピターを救うのは狼のDNAを持つ交配種の男
ジュピターは何度も命を狙われるが、その都度 傭兵のケインに救われる。そして、そのうちジュピターはケインを愛するようになる。
結局、この物語は壮大な御家騒動である。アプラサクス一族も王ではあるが、銀河全体の王ではなく、幾多ある王族の一つにすぎない。だから銀河の警察もいて、王族を縛るある種の憲法も存在する。それは非常に人間的で、科学は進化しても社会は進化していない、という気を起こさせる・・。
『マトリックス』と比べると、本作は、スケールこそ大きいものの、こじんまりとした世界観となっている気がする。なので、次回に期待を持ち越そう。
ただ、映像は美しく迫力はある。
DVDを買ってor借りて、酒飲みながら鑑賞するなら、それは十分な価値があると思う。