もはや他のバイクには縁がない、と思うと、他のバイクも気になりだすものだ。ふと、昔のバイク遍歴を思い返すうちに、意外と写真が残っているものが少なく、また記憶の奥で風化しているバイクも多いことに気がついた。そこで古いアルバム(ほぼデジタル以前のものが多い)を引っ張り出して、まとめてみようと思いついた。
偶然の出会いに何かがスパークした
前回まで、僕の主なオートバイ遍歴を手短に紹介してきた。
第7回では、オートバイの”理不尽な”駐車禁止問題で、多くのバイク好きがバイクを諦めていったなかで、僕もほぼ同じくバイクを降りかけていた話を書いた。
実際、2010年にスポーツスターを手放して、ベスパ(PX200FL2)を手元に残したものの、ベスパにまたがるのは月に一度あるかないか。日常的には車を使うようになり、僕はオートバイ乗りとしてはサンデーバイカーどころか、マンスリーバイカーでさえない状況になっていた。
そんなとき、2014年7月のことだが、たまたま仕事で打ち合わせがてら会食をした方が、古い大型バイクを乗っているが、ちょっと怪我をしそうになったりしたことで、手放そうと思っている、という話をされたことに、わずかな好奇心を覚えて「何に乗ってらっしゃるんですか」と何気なく質問をした。
すると彼は
ゼッツーです。
と答えた。
その瞬間、僕の頭のなかで、いや、たぶん胸の奥底でだろうと思うが、何かがスパークした。
ゼッツー?ZII? それって、カワサキの750RSのことですよね??
「そうですよ」その方は笑いながら答えた。
それ、売るなら絶対僕に売ってください!!
僕は思わず、叫ぶように言ったのだ。
2014年9月1日。僕のゼッツーが生まれた
その後、LINEなどを使いながら金額を決め、受け渡し日を2014年8月31日に決めた。
指定された場所に現金を所持して伺って、バイクと交換をした。
翌日の9月1日、実はかなり強い雨に降られたのだが、僕は陸運局出張所に赴き、名義変更を行い、新しいナンバーを受け取った。これで名実ともに僕のZIIとなったのだ。
もうバイクはいいかな、と思いかけていたことが嘘のように、僕の生活はキャンディーオレンジに染まった。以来、週に1度は必ず短い時間であっても”彼女”を走らせることを怠っていない。
仕事の忙しさは前にも増してきたが、手に入れた以上、それがオーナーとしての義務だし、少しでも多く、少しでも長くZIIに触れることが僕のストレス解消になっている。
ある意味バイクは大型犬を飼うようなもので、家族同様だ。ひとたび家族としたら、雨だろうが風だろうが散歩には連れていくのが飼い主の務めだろう。そしてそれは義務と同時に飼い主の楽しみであるはず。それと同じだ。
その後、ロレンスの編集長になっていただいた二上さんとの出会いもあり、いまではオートバイは趣味を超えた、大事な仕事の一部にもなった。ZIIとの出会いが、僕の人生のギアを変えてくれた、と言っていい。
このZIIがなかったら、僕はロレンスというメディアをスタートすることもなかった。
オートバイは単なる機械ではない。人生を変える機会であり、今後もともに駆け抜けていく大事な相棒である。
少年時代から欲していた、憧れていたゼッツー。彼女はいま、僕とともにあるのだ。
出会ったのは2014年の夏の終わりだった。そろそろ一年がすぎる。しかし、僕にとってもはや夏は終わらないのである。